才色飛車〜利き駒の調べ〜
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道中
「違うわ!よく聞け!こーやって並べ!男女男男女男女!……つまらん」
人気のない場所に彼方の声が響いた。
供の八尋は緊急の用でこの場を離れたため近くにいない。
限界が差し迫った表情で“くれぐれも油断しないで下さいよ彼方さん、く れ ぐ れ も!”と散々念を押されたが、彼方の頭に警戒という単語は無かった。
八尋の努力も無駄に終わり、彼方は警戒どころか完全にリラックスタイムだった。
「なんか飽きたなー、八尋ちゃんまだかなー」
なんか必死な顔してたしなぁ。
生理現象かな?
別にその辺で手っ取り早く済ませちゃえば良かったのに。
……いや、もしかして下したとか…?
忍の八尋ちゃんが!!?
まさか!
あ、でもこの前…冬春の作った薬を試されていたような…?
彼方は勝手に八尋がお腹を壊したものとして解釈していた。
可哀想に…と思いつつも、一人で歌っていた彼方。
だがいくら人気がないとはいえ、さすがに一人で歌っているのも気まずい。
そしてそれ以上に飽きてしまった彼方はボーッと思考の海に落ちていった。
“女。我を知っておるのか”
“妖刀にこのような力があろうとはな”
“貴様のような人間と会うたのは初めてだ”
“そなたの全てを知るのは我だけ。そして我の全てを知るのはそなただけ、か”
“我と来い”
“彼方――…”
――――――………
(元就さん!きちんと仕事してください)
(そのようなことやっておれぬもん)
(今日に終わらせないとおやつの大福抜きですよ!)
(な、なんだと…計算してないぞ!)
(ならさっさと終わらせる!ほら早く!)
(我もうやだ!やだやだ!)
「―…ぶは!元就さんがそんなんだったら笑える…ってかいつの間にか妄想になってた」
っていやいや…私の場合は妄想じゃなくて空想だよね、うん。
脳内で一人納得して、うんうんと頷いた彼方。
どことなくまだボーッとしたままで、しばらくの間木の合間から覗く空を見上げていた。
そしてポツリと一言呟いた。
「……イイ腰してるよな」
「Σなんだよそれ!?」
「Σふおぁ!!?」
突然のツッコミに驚く彼方。
そして自分でも思わぬツッコミだったのだろう、しまった、という顔をした少年。
森蘭丸と彼方の視線が交わった。