才色飛車〜利き駒の調べ〜

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竜の魂



「宴じゃあぁぁっ!!!!!」



虎のオッサンの大きな声が響いてからどれくらい経っただろうか。
酒が入ったこともあり、それぞれが楽しく盛り上がっていた。



「政宗、おかわりは?」

「貰うぜ」



だがその中で一番気分が良いのは俺だと思う。
俺の隣で酒を注ぐ彼方の横顔を盗み見ると、自分の口元が緩んでいくのが分かった。
隣にコイツがいるってだけでこんなに気分が高揚するもんかね。



「彼方。お前も飲めよ」

「んー…飲んじゃ駄目って言われてんだよね…」

「Ah?元就サンにか?」

「うん。元就さんか氷援隊の誰かがいないと駄目だーって。八尋ちゃんも今はいないしねー」

「あー…なるほどな」



毛利としては酔った彼方を心配してるんだろうな。
まぁ彼方本人は不満そうな顔をしているが。



「酒弱いのか?」

「ううん。まぁ強くもないけどね。でも今までに記憶が飛ぶようなことはなかったな」

「なら一杯くらいは飲めよ。同盟を結んだせっかくの祝いの席だ」

「うん、じゃあ頂いちゃお。あ。ありがとー」



注いでやった酒を飲む彼方。
奥州では宴の席を設けなかったから、なんだか新鮮な感じがする。



「小十郎さんもどうですか」

「あぁ頂こう」

「信玄公にもお酌してくるね」

「おう」



武田の家臣たちに挨拶をしながら信玄公の所へ向かった彼方。
その後ろ姿を眺めていると、小十郎がくつくつと笑っているのが分かった。



「なんだよ小十郎」

「いえ…政宗様の視線が彼方に縫い付けられております故」

「Ha!否定はしねぇ」

「ハハハ、まぁ彼方も元気なようで良かったですね」

「だな。何よりだ」



小十郎と話しているうちに彼方が戻ろうと歩き出した。
注ぎ返された酒をかなり飲んでいたが(真田からもご丁寧にな!)、足取りはしっかりしている。
本人の言うように弱いわけではないようだ。



「ただいまー」

「おぅ、まだ飲むか?」

「んーん、いらない」

「………?」



何か…変だ。
雰囲気が違う気がする。



「政宗ー?」

「っ!」



表情だ!
表情が違ぇ!
いつもヘラヘラしてんのがニコニコになってるっていうか!
雰囲気もやたらとsexyっていうか!



「彼方…?」

「んー?」

「(ちょ、可愛い)だ、大丈夫か?」

「ん!」



コテンと首をかしげる彼方。
頬に手をやると擦り寄ってくる。
何コイツ可愛い。
毛利が酒を止めるのが分かったぜ…
酒を飲ますと彼方の身が危険だ。
俺も危険だ、色々と。


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