才色飛車〜利き駒の調べ〜

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「烈火ぁ!!!」

「甘いぜ!HELL DORAGON!」



道場の中。
そこでは炎と雷の熾烈な闘いが繰り広げられていた。
真剣を使わない単なる試合ではあるものの、迫力は満天。



「………(暇になってきた)」



その様子を眺めていた彼方だったが、少々飽きてきていた。
そんな彼女の元に佐助が降り立った。
突然現れた佐助に、うぎゃあ!と驚いた彼方。
だがタイミングよく続いてやって来た小十郎に意識を向けた。



「まーったく飽きないねぇ旦那たちも」

「もうかなりの間やり合ってますよ」

「なんだ、なら飽きたんじゃねぇのか?」

「正直ちょっと飽きてきました。二人して構ってくれないんだもん」



ムス、とふくれた彼方を見て、佐助はにやける口元を隠しもせずに話し掛けた。



「なら俺様と遊ぶー?」

「え!いいんですか!」

「いいよいいよー」

「わーい!佐助さん好きー」

「あはー(あーこの胸があたる幸せ…)」



パッと笑顔になった彼方は佐助に抱き付いた。
それを見越しての発言だった佐助は、作戦成功とばかりに満足気な顔をした。



「佐助さん腰細いですねー」

「そう?でも脱いだら凄いよー」

「え、腹筋が?」

「んー色々、ね。見たい?」

「見たい見た…ぐぇ!」

「やめねぇか!まったく…」



くっついたままだった二人を引き離したのは小十郎。
彼方の首根っこを掴む形で後ろに引いた。



「彼方!お前はもっと警戒心を持て!」

「は、はぁ…」

「何かあってからじゃ遅ぇんだぞ!」

「はーい…」

「もー右目の旦那ってば野暮なんだから。彼方ちゃんだって大人なのよ?」

「お前みてぇなのが危ねぇって言ってんだよ」

「心外だねぇ」



バチバチと火花を散らす蒼紅主従。
そこへ彼方が手を挙げた。



「はーい小十郎せんせー」

「…なんだ」

「警戒してても抱き付かれた場合はどうすればいいんですかー?」

「叫ぶとか肘鉄とかあるだろ」

「政宗なんですけど…」

「………」



政宗様…と小十郎は手で顔を覆った。
忍どうこうより主君が問題だったか、と頭を悩ませるが、本人は未だ鍛練に夢中でこちらに気付きもしない。



「それとー」

「…あぁ」

「小十郎さんに抱き付くのも無しですか?」

「っな!」

「小十郎さんにも警戒心が必要なんでしょうか」

「お前なぁ…」

「あっはっは!こりゃ右目の旦那の負けでしょ。さすが彼方ちゃん」





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