才色飛車〜利き駒の調べ〜

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「お待たせ幸村!」



しばらくすると彼方殿がやってきた。
政宗殿に手を引かれて。



「袴姿もSo Beautifulだぜ、Honey?」

「Thanks!」



袴姿で微笑む彼方殿はとても綺麗であった。
髪を結っているからだろうか、いつもより大人っぽく見えるその姿から目が離せなかった。
しかし彼女の手が政宗殿に引かれていると思うと、どうしようもなく胸が苦しくなった。



「政宗も教えてくれるって。いいよね?」

「もちろんでございまする!」



三人で話ながら馬の用意をした場所へと向かう。
さっきの胸の苦しみはもうない。
なんだったのであろうか…。



「白星ーよろしくねー」

「ブルル…」

「彼方殿ならきっとすぐにコツを掴んでしまいましょうぞ!」



そう言ったのがつい先ほど。



「上手ぇじゃねぇか!」

「さすが彼方殿!」

「わっほーい!」



乗馬が出来ていたのだから当然とも言えるが、彼方殿はすぐに余裕を持って馬を走らせられるようになった。



「なんだ、上手ぇじゃねぇか彼方。もう余裕だな」

「へへ、慣れてきたからねー」



嬉しそうに笑う彼方殿を見て政宗殿と俺も口元を緩めた。

彼方殿が笑うとついこちらもつられて笑ってしまう。
ころころと変わる彼女の表情は周りを和ませるような気がする。
佐助が“つい世話を焼いてしまう”と漏らしていたが、それもなんだか分かる。



「Hey,彼方!手綱離してみろよ!」

「伊達乗り!?それは無理かもー!ちょっとやったことあるけど…」

「彼方殿ならできるのでは?」

「幸村は私を買いかぶり過ぎな気が…」

「ごちゃごちゃ言ってねぇで行くぜ!Let's party!」

「えぇ!?や、YA-HA-!」

「参りまする!」



馬を走らせた政宗殿に彼方殿と俺も続いた。
腕を組んで堂々としている政宗殿に対し、彼方殿は若干びくびくしている。



「ゎっ!」

「彼方殿!」



ふとした拍子に態勢を崩してしまった彼方殿。
焦って手綱に手を伸ばすも僅差で届かずに、彼女の体が傾いた。
落ちる―…そう思った時には勝手に手が出ていた。



「……っはぁ」

「幸、村…」



落ちそうになった彼方殿を自らの方へ、必死に引っ張り上げた。
同じ馬の上に治まった彼女の体温を感じてホッとした。



「彼方殿…お怪我は」

「大丈夫…ありがと幸村…」

「ご無事でよかったでござる」



腕の中から俺を見上げて微笑んだ彼方殿に口元が緩んだ。
……腕の中…?
Σ腕の中だと!!?



「んなぁ!?はれっ、破廉恥でござ…っ」

「ぎゃあ!落ちる落ちる!」

「はっ!も、申し訳ない…!」

「いつまでも彼方を抱いてんじゃねぇよ真田ァ!怪我はねぇかHoney…?Sorry、俺が無茶を言ったからだな。怖い思いをさせちまったぜ…」

「あ、いや大丈夫だから…」

「ほら、降りてこい」



慌てて馬を降り、駆け寄ってきた政宗殿が彼方殿を抱えるようにして降ろした。
それを見てまた胸が苦しくなった。


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