才色飛車〜利き駒の調べ〜

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小田原前



「彼方ちゃぁ〜ん?小田原行き楽しみだねぇ?」

「はい!」

「あ、いやそんな素直に言われても…。てかなんで俺様には教えてくれなかったの!?」

「あれ?知らなかったんですか?」

「(グサッ)大将は何だって…?」

「信玄公笑ってました。行ってくるがよいわぁ!ワハハハ!とか言って」

「…いつ行くの?」



小田原行きの真相を確かめるべく、彼方に話しかけた佐助。
嫌味を込めて言った言葉を嬉しそうな笑顔でスルーされた上、傷をえぐられた佐助はガックリとうなだれた。



「さぁ…」

「さぁ、って…」

「だって風魔さんが迎えに来てくれるんですよー。きゃー!早く来ないかなー!」

「風魔ァ!?」

「風魔さんが来てくれるなら行ってもいいって言ったんですよ。ぶふふ!」

「いや…うん…色々どうかと思うよ」

「楽しみだなー!」



風魔小太郎が迎えにくる、という新事実に驚いた佐助だったが、やたらと笑顔の彼方にそれ以上何も言えなくなってしまった。



「そろそろ来てもいい気がするけどなぁ。あ、でも八尋ちゃんは行けないかな。ひとりで行くかー」

「まだ熱があるみたいだしねぇ。でもひとりは危ないよ!なんなら俺様が…」



行ってもいいよ、と続くはずだった言葉。
だがそれはその場に割り込んできた蒼い影によって遮られた。



「Honey!」

「ぐぇ!政宗…苦し…っ」

「おっと…sorry、お前を見るとつい思いきりloveを表現したくなっちまうんだ」



思いきり彼方を抱き締めた政宗。
その腕を緩めると今度は頬擦りする。



「近い近い!//」

「Ahー?いいじゃねぇか。もっと近づこうぜ」

「ちょっと!俺様もいるんだけど!」

「なんだ、いたのかよ猿」

「猿じゃないし!てか離れなよ!彼方ちゃん嫌がってるでしょ」

「嫌がってる?まさか」

「政宗…その前向き思考は素晴らしいよ。でも恥ずかしいから離してー」

「照れちまって…お前は本当にcuteだな」

「(うぜー!彼方ちゃんも嫌がればいいのに!)」



佐助にとって完全に邪魔者となった政宗。
バシバシと殺気を送るが、政宗はどこ吹く風で彼方にくっついていた。



「彼方ちゃん自分からくっつくのは平気なのに人からやられると照れるんだね」

「そうなんですよねぇー」

「だが照れるってことは俺を男として見てるってことだろ?」

「う、うーん…?」



都合のいいように解釈する政宗に彼方は困っている様子だったが、佐助は本来の目的を思い出した。



「そうだ!彼方ちゃん!駄目だよ!ひとりじゃ絶対行かせないからね!」

「えー」

「えーじゃないの!」

「別にパッと行ってパッと帰ってくるだけだし…」

「あぁ、北条の爺さんに招かれてるってアレか。なんだよ、雀チャンは行けねぇのか?」

「スズメ?…あぁ八尋ちゃんか。雀部だもんね。初め“ササイベ”って読めなくてさーあはは」

「彼方ちゃーん?話を逸らそうとしても無駄だよー?」

「………(バレたか)」



厄介事を避けようと話を剃らそうとした彼方だったが、佐助には通じなかった。




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