才色飛車〜利き駒の調べ〜

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小田原直前



「風魔さーんww」



彼方ちゃんが風魔にべったりになった。
…俺にはそんな風に甘えてくれないのに。
竜の旦那なんか拗ねてどっか行っちゃったよ。



「風魔さん、八尋ちゃんのトコ行きません?」

「(コクリ)」

「八尋ちゃんにも紹介しないといけないですからね!」

「(パクパク)」

「…あ…い?め…?」

「“初めのように”、だってさ」



風魔の言っていることを理解しようと頑張っている彼方ちゃん。
彼方ちゃんには何でもなんとなーく器用にこなせてしまう印象があったけど、さすがに読唇術はできなかったようだ。
代わりに伝えてやると嬉しそうな顔をした。
…こういう顔が見たくてつい世話を焼いちゃうんだよね。
ホントは風魔の言ってることなんて伝えたくもないのにさ!



「おぉ!さすが佐助さん!んー初めってのは…会ったとき、ですか?」

「(コクリ)」

「えと…もしかして敬語じゃなくてもいい、的な…?」

「(コクリ)」

「わーっ!名前も?名前もいいの?」

「(コクリ)」

「こたろー!」



ぎゅぅ、と彼方ちゃんが風魔に抱きつく。
風魔は驚いたようで、一瞬ビクリとした。(貴重だ、驚く伝説の忍)
でもとくに抵抗するでもなく、そのまま彼方ちゃんの好きなようにさせていた。



「あー癒される。じゃあ行こっか!」



風魔は彼方ちゃんにこっちだよー、と腕を引かれるままに歩いていった。
そんな風魔がくるりと俺の方に振り向いた。


ニヤリ


んな!!?
なんだよ今の!
いいだろう、みたいな!
羨ましいかと言わんばかりの嫌な笑顔!(口元だけだけど!)



「なんだよ風魔…俺様に喧嘩売ってるわけ?」

「(プイ)」

「この…っ」

「佐助さん?どうしたんですか?」

「彼方ちゃん!こいつ陰険!」

「えー?小太郎なんかしたの?」

「(コテン)」

「ぎゃん!可愛い!ほら!知らないって!」

「騙されてるってば!」



首をかしげて知らないふりをし、彼方ちゃんに寄り添う風魔。
彼女から見えない位置で、また人を小馬鹿にしたように口元を歪めて見せた。



「あ!また!彼方ちゃんには見えないからって!」

「もー佐助さんてばどうしたんですか?」

「だから風魔がさっきから喧嘩を売ってくるんだってば!」

「小太郎が?こんなにイイ身体の人がそんなことするわけないじゃないですかー」

「関係ないっしょそれ!」



イイ身体って…
彼方ちゃんらしいけどさ!
だからって酷くね!?



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