才色飛車〜利き駒の調べ〜

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城下町



「美味しいですねぇー」

「そうだね」



彼女が団子を片手にへにゃりと笑うものだから、僕もつられて笑ってしまう。


情勢を把握するために自ら潜入した小田原の町。
そこで絡まれている女性を見かけた。
仕立ての良い着物を着た女性だ。
放っておいてもよかったのだが、彼女が腕を捕まれて顔を歪めたのを見てつい口を出してしまった。
でもまぁ…正解だったと思う。
なかなか可愛らしい子だったから気まぐれに誘ってみたけど、思っていたよりも楽しめている。



「僕はね、友人と共にこの世界を変えていこうと思っているんだ」

「…世界を、ですか」

「あぁ、今の日ノ本は弱い。この弱い世界を強くするんだよ」

「強く…」

「今のままでは未来は無い。僕らが未来を作るんだ」

「将来の日ノ本を切り開くということでしょうか?」

「そうだね」



彼女は真剣に僕の話を聞いている。
こんな話をまともに聞いてくれる女性は珍しいと思う。
そもそも僕が話すこともそうあるわけではないけど、こうも真剣になってくれる女性はそういるもんじゃない。

そんな彼女に対し、僕はお茶を飲みながら質問をしてみた。
うん、いいお茶だね。



「ねぇ、君は今の世の中をどう思う?」

「Σっぐ!げほ、けほっ!(小指立ってるーっ!)」

「大丈夫かい!?」



団子を頬張っていた彼女が、僕の問いを聞いてこちらに視線を向けたとたんにむせてしまった。
僕の症状とも違うみたいだから単にむせただけだろう。
でも苦しそうだったから慌てて持っていたお茶を差し出したら、彼女はもっと苦しそうに腰を丸めた。



「(Σ追い打ちーっ!わらっ笑っちゃうって…!ひぃーっ!)けほっ!ふぅ…っ、ごほっ!」

「無理しないで。ゆっくり呼吸するんだ」



背中を擦ってやると彼女は徐々に落ち着きを取り戻した。
苦しかったのだろう、涙を浮かべて疲れたような顔をしている。



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