才色飛車〜利き駒の調べ〜
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「…こたろー」
姫君が己の名を呼んだ。
素早く御前に馳せ参じると、姫君は己を見て薄らと微笑んだ。
「相模はいい所だねー(静かだし気候もいいし…あ、でもかまぼこ食べはぐったな…)」
一言そう呟くと、姫君は黙って視線を空に向けてしまった。
どことなく憂いだ表情の姫君。
彼女が何を思ってそう言ったのか己には理解しきれないが、ここを気に入っていただけたのだということは分かる。
「小太郎はさー…好き?(かまぼこが。いつでも食べられるんだろうなぁ)」
「………(この地が好きかどうかと聞かれても己にはその感覚がよく分からない…)」
「(身近過ぎて食べないのかな)…分かんないかな。でも…嫌いではない?」
「…………(コクン)(嫌なわけではない、と思う)」
「そっかそっか!(うん、きっとかまぼこ好きなんだな)」
姫君は空に向けていた視線をこちらにずらし微笑んだ。
そしてその視線を再び空に向け、目を細める。
彼女が住まう安芸へ思いを馳せているのだろうか。
心優しい姫君のことだ、国の全てを大切にしているに違いない。
「美味しいよね、かまぼこ」
「……………(Σかまぼこ、だと…!?)」
…この方の無邪気なところを忘れていたようだ。