才色飛車〜利き駒の調べ〜
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「いやぁ巻き込んじゃいましたね」
「まったく…ガキかお前は」
「えへへ…」
「もう、あんな高い所に…もし落ちて怪我でもしたらどうすんの!風魔でしょあんな危ないこと教えたの!彼方ちゃんは真似しちゃ駄目だよ」
「う…ゴメンナサイ…(小太郎ゴメン…なんか小太郎のせいになっちゃった…)」
しょぼん、とした彼方に佐助も小十郎もそれ以上何も言えず苦笑するしかなかった。
ちなみに小太郎は彼方を送り届けた後、今度は信玄からの手紙を持って相模へと戻っていった。
だが彼が再びこちらに向かって来ていることはまだ誰も知らないことである。
「てか幸村と政宗は?」
「あー、まぁた道場で暴れてるよ」
「ふーん…道場壊れないといいね」
「ちょ、不吉なこと言わないで!」
佐助は容易に想像できる事態を恐れて慌てた。
その様子を見て彼方はにひひ、と笑って見せた。
「あまりからかってやるな」
「はーい」
小十郎が彼方の頭を撫でながらそう言うと、彼女は気持ちよさそうに返事をした。
「なんか彼方ちゃんて右目の旦那には素直だよね」
「そうかな?なんだろ、多分こう……人格の差?」
「(グサッ)今の結構効いたよ…」
「い、いやなんていうかホラ!小十郎さんには大人の余裕みたいなものがあるじゃん!?だからつい甘えちゃうっていうか!お兄ちゃん的な?」
「…兄か、悪くはねぇ」
そう言ってまた頭を掻き混ぜてきた小十郎に彼方は笑顔を見せた。
「でも佐助さんもお兄ちゃんぽいよ。年の近い兄って感じ」
「そう?(それはそれで悲しいんだけど…)」
「まぁ幸村との様子を見てるとオカンて感じだけどね!」
「何それ!?」
「はっはっは、良かったじゃねぇか猿飛」
「小十郎さんは政宗の保護者ですけどね」
「あぁ!?保護者だぁ!?」
「いひゃいいひゃい!」
小十郎の手が彼方の頬を伸ばす。
「こゆーろーはーん…」
「おーおー、変な顔だな」
「ひろいれふよぉー」
「可哀想にー」
そう言いながらもクスクスと笑っている佐助。
さっきの仕返しと言わんばかりに意地悪な笑みを浮かべた。
「うー……う?」
「どうした?」
彼方の視線が小十郎の後ろ、空の方へと向けられた。
彼女の頬から手を離した小十郎もそちらに目を向けようとした瞬間、声が聞こえてきた。