才色飛車〜利き駒の調べ〜

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29 初恋



「ったく旦那ぁ、彼方ちゃんに後で謝っときなよ?」

「俺を差し置いて彼方を押し倒すとは許しがてぇな」

「痛かっただろうぜ、可哀想に」

「さぞや柔らかかっただろうな。羨ましいんだよてめぇこの野郎」



小十郎が彼方を運んで行った後、幸村を起こした佐助と政宗。
正座してうなだれる幸村を前にして文句を言っていた。



「…竜の旦那、さっきから何か違くね?」

「何が違ぇんだ。お前は羨ましくねぇのか?」

「すっげー羨ましい」



話の方向性がずれる二人。
しかし佐助は微動だにしない幸村に気付いて声をかけた。



「ちょっと旦那?聞いてるの?」

「………」

「旦那ー?」

「…佐助…」

「なになに?」

「女子とはあんなにも柔らかいものなのか…?」

「はぁ?」

「乗馬の際にも思ったが…あんな…っ良い香りが!うおお!!!」



思い出したのだろうか。
幸村は邪念を払うかのように頭を地に叩きつけた。



「一体!俺はっ!どうしてしまったのだぁ!!!彼方殿が頭から離れぬぅう!!!」

「ちょ、旦那っ!」

「てかコイツ気付いてねぇのか?」

「みたいだねー…」

「おい真田!アンタは違った意味でもrivalってことだ。だが負けるつもりはねぇし、このまま毛利に譲る気もねぇ。アンタはどうする?」

「な、何の話でござろう…?」

「彼方の話だ」

「それが何故譲る等と…?」



彼方、という言葉に再び少し顔を紅くした幸村だったが疑問を口にした。
それを聞いた政宗は思い切りため息を吐いた。
佐助も苦笑している。



「自分の気持ちくらい自分で考えな」

「そうだねぇ。こればっかりは俺様も教えてあげらんないぜ」

「う、む…」



自分の気持ちの意味も分からないまま、幸村はひたすら考えることになるのだった。




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