才色飛車〜利き駒の調べ〜
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30 再会
(…朝…?ん〜…まだ眠い、けど早く起きないと…何でだっけ…?出迎え…そうだ出迎えに…、……っ!)
「元就さん!Σッんぎゃあ!」
「おはよー彼方ちゃん」
「………」
「さ、佐助さん!?てか小太郎!?なんでここに!?」
パチッと目を開けた彼方の目の前には佐助と小太郎の顔があった。
どうやら覗き込まれていたようで彼方は恥ずかしくなったが、誤魔化すようにまくし立てた。
「また書状を持ってきたんだってさ」
「そうなんだ。小太郎ぉー」
「………」(いそいそ)
「ちょっと!なんで風魔なの!?」
起こしてくれ、と寝転んだまま小太郎に手を伸ばした彼方。
小太郎は当然とばかりに彼女を抱き起こす。
そのまま少し乱れた寝間着の合わせ目をさり気なく整えてくれた。
その様子に佐助が文句を言ったが、彼方はスルーして言葉を続けた。
「元就さんは?」
「無視!?…毛利の旦那はまだだよ。でもそろそろじゃない?着替えてた方がいいかも」
「うん…じゃあそうする」
彼方は楽しみで仕方ない、といった様子でニコニコと荷物の方へ向かった。
「嬉しそうだねぇ」
「うん!佐助さんだって幸村と離れてたら会いたくなるでしょ?」
「う、うーん…?」
「ならないの…!?」
「ちょっ、何その信じらんないコイツみたいな目は!俺様だってねぇ、休みたい時ぐらいあるんだよ!たまにはのんびりしたいんだよ!」
「なんかごめん…」
佐助の思わぬ暴走に居たたまれなくなって謝る。
だが佐助はフイッと横を向いてしまった。
「ごめんってばー、ねぇー佐助さぁん」
「ふーんだ」
「(可愛いなオイ)許してー?」
「許してあげてもいいよ」
「やった!」
「ただし!」
「たかし!」
「白N!?ただしって名前じゃないから!、っじゃなくて!もうっすぐ話が逸れるんだから!」
「佐助さんがツッコミ入れるからー」
ヘラヘラ笑う彼方に、佐助は脱力しつつも話を続けた。
「もー、ホントに怒っちゃうからね!」
「ごめんごめん!で?どうしたら許してくれる?」
「佐助、って呼んでくれたら」
「へ?」
「佐助さんじゃなくて佐助って呼んで?彼方ちゃん未だにさん付けで呼ぶじゃん」
そう言って口を尖らせた佐助に悶えていた彼方。
顔に出ないように必死である。
「風魔はすぐに名前で呼んだのにー」
「………(ニヤリ)」
「………(カチーン)」
「いやぁ今さら変えて呼ぶのも違和感があったからさ」
「やだ!呼び捨てにして!」
「佐助」
「っ!」
「佐助ぇ、許して?」
「そんな可愛く言われちゃったら許すしかないでしょーが…」
苦笑して頬を掻いた佐助。
だがほんのりその頬は紅く、嬉しさが滲み出ていた。
「………(クイクイ)」
「ん?あ、そっか着替えなきゃね」
「彼方ちゃーん、手伝ってあげよっ「佐助ぇえええぃ!!!!」…あーもう!」
「呼ばれてるねぇ」
調子づいた佐助を邪魔するように、小太郎が着替えへと気を引いた。
だが佐助も簡単には譲らない。
彼方をからかおうとした…が、その瞬間、佐助を呼ぶ幸村の声がそれを遮ったのだった。
「(なんで同じ名前を呼ばれてもこんな違うんだろう…!) まったく…今行きますよーっと」
「行ってらっしゃーい」
「うん」
ヘラッと笑って佐助は姿を消した。
彼方はそれを確認すると、着替えを出して小太郎に尋ねた。
「小太郎ーどっちがいいかなぁ?」
「………(コテン)」
「ぶふぉっやっぱコテンはヤバい、可愛い…!…えーと、小太郎が選んでくれた方を着たいな」
「………」
「ちなみに下はこのショートパンツを履きます」
一瞬の本音の後、彼方は服を広げてみせた。
小太郎としては、選択肢が二つしかないとはいえ、自分が彼女の服を選ぶなどおこがましいにも程があると思っていた。
だがそれ以上に、彼方が自分が選んだ方を着るということが嬉しかった。
「(どちらでもお似合いになると思うのだが)」
「どっちでもいい、は無しだよ?」
「(…先手を打たれた)…こちらを」
「あ、こっち?じゃあこれにする」
小太郎は一瞬だけ口角を上げると、姿を消した。
それを確認してから彼方はやっと着替えに取りかかったのだった。