才色飛車〜利き駒の調べ〜

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「来た!元就さぁーん!」



門の見える位置で元就が来るのを待っていた彼方。
彼が到着すると、一目散に駆けていった。
彼方の様子を気にかけていた男たちは、パッと笑顔になった彼女を微笑ましく思うと同時に、なんとも言えない気持ちになった。
元就が来たのなら、彼女は彼にべったりになることは明白だったからだ。



「元就さん元就さん!」

「まとわりつくでないわ」



馬から降りた元就にピッタリとくっついたままの彼方。
元就が動く度にその動きに合わせて着いていくその様は、飼い主にじゃれつく犬のようだった。



「もーとなーりさぁーん」

「邪魔くさいやつよ。行くぞ」

「!えへへ。あれ、八尋ちゃんは?」

「帰した」

「そうなんですかー」



元就は彼方の手を引いて歩き出した。
きゅぅ、と手を握り返し、大人しく着いていく彼女を男たちは羨ましそうに見ていたのだった。



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「とりあえず宴じゃあああ!」



信玄の言葉に佐助は「またぁ!?」と嘆いていたが、宴の準備はすぐに整った。



「元就さん、飲んでもいいですか?」

「一杯だけにしておけ」

「えぇー」



彼方は元就の隣で宴が始まるのを待っていた。
それをつまらなそうに見ている政宗。
そんな政宗に苦笑しながら彼女を見る小十郎。
恋心に戸惑いつつもチラチラと視線を送る幸村。
宴の準備を手伝いつつもなるべく彼女の近くをうろつく佐助。
見えない所から様子を見る小太郎。
それぞれが別の場所から彼方を見ていたのだった。


彼女が元就の側を離れないのは宴が始まってからも変わらず…
あまり酒を飲まない元就の話し相手となっていた。



「Hey、真田ァ…」

「!なんでござろう」

「彼方がいないんじゃつまらねぇ。飲み比べでもしようじゃねぇか」

「おぉ!望むところでござる!」

「政宗様っまた無茶を…」

「黙ってな小十郎!こうでもしなきゃやってらんねぇぜ」



ふてくされた様子で幸村に飲み比べの勝負を挑んだ政宗。
小十郎は止めたが、政宗は聞く耳持たずだったので諦めた。
だが聞こえてきた“飲み比べ”という言葉に反応した人物がひとり。



「私もやりたい!」

「「「なっ…」」」

「馬鹿者っ、座っておれ」

「いいじゃねぇか!Come on!」

「ま、負けませぬぞっ」

「彼方ちゃん大丈夫なのー?」

「大丈夫!やる!」

「飲むなと言ったのを忘れたのかっ」

「元就さんがいればいいって言ったー!」



元就が止めるのも聞かず、政宗たちの方へ寄っていく彼方。
あっという間に機嫌の治った政宗は手招きして彼女を座らせた。



「おい彼方。毛利は良いって言ったのか?」

「大丈夫ですよー!ね!いいですよね、元就さん!」

「知らぬ。勝手にしろ」

「やった!」



呆れた様子の元就をよそに、彼方は盃に酒を注いでもらった。
そして始まる飲み比べ。
お子さま3人組は次々と酒を流し込んでいくのだった。



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