才色飛車〜利き駒の調べ〜
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32 軍議
一夜明けて、穏やかな朝を迎えた日。
甲斐に集いし武将たちは一つの部屋に集まっていた。
今後の動きについて話し合うためだ。
元就と彼方、信玄と幸村、そして政宗、小十郎…
佐助と小太郎は少し離れた位置で控えていた。
「ふむ、集まったな」
「遅いぞ独眼竜。我を待たせるな」
「Ah…sorry…」
「しっかりなされよ政宗様」
「政宗おはよ…」
信玄に続いて元就が文句を言う。
だが政宗はだるそうに謝罪しただけ。
その政宗に小十郎が注意するが、彼方もだるさを全面に押し出した声で挨拶をするのだった。
「む!政宗殿と彼方殿はどこか具合が優れないのでござろうか!」
「声を落とせ真田幸村ァ…頭に響く…」
「幸村はホントにお酒強いんだね…」
「二日酔いでござったか…」
「ふん、無様よ」
そう、前日の宴による二日酔いである。
政宗と彼方はぐったりしながら着席しているが、苦笑されつつもそれ以上は触れられることもなく話は始まった。
「まずは北条が我らの同盟に参加したことから報告しよう。なかなか時間がかかったが、ようやく書簡にて参加の意を示してくれた。北条の地が我らの味方となるのは心強いことじゃ」
「よくあの北条のジーサンが決断したな」
「我らの力になってくださるのならありがたいでござるよ!」
「けどここにきて何故…」
「わっはっは!それは彼方のおかげよ!」
「へ?」
信玄に顔を向けられてポカンとする彼方。
政宗や幸村たちも理由が分からずにいる様子だ。
「彼方よ、氏政はお主の言葉によって同盟への参加を決めたそうだ」
「ええ!?そうなんですか!?」
「オッサン!俺にも書簡を見せてくれ」
「うむ、だが彼方の発言には具体的なは触れておらぬぞ」
「Ahー…そうだな…」
書簡に目を通した政宗だったが、知りたいことが書かれていないと分かると、彼方に向き直った。
「彼方、何を言ったんだ?」
「えぇー…特別何か言った記憶はないんだけどな…」
「どのようなことを話されたのでござるか?」
「んー…この茶菓子が美味しいとか…城下町はどうだったかとか…あ!あと元就さんの将棋の教え方が鬼畜だとか!」
バシッ!
グギギギギギギギ…!
「痛たたたたぁあッ!」
「アホめ…!」
後ろ頭を叩かれた彼方。
今回はさらに腕を捻られるオマケ付きだ。
「事実を言っただけなのにィイ…!」
「余計なことを言うでないわ!」
「ま、まぁまぁ…」
佐助が止めると、元就はフンと鼻を鳴らして彼方を離し、座り直したのだった。
「で?北条のジーサンが参加した経緯はともかく…今後はどう動くんだ?」
「織田、豊臣のどちらを優先して牽制するかじゃな」
「それに関しては彼方が情報を持っておる」
「「「は?」」」
「へ?」
元就の言葉に一同は彼方へと顔を向ける。
その様子に本人も驚いたようだった。
「小田原の城下で会った男について、こやつらにも話せ」
「あぁ…」
半兵衛のことか。
彼と接触したそのときに一緒にいた小太郎にチラリと視線を送ってから、彼方は口を開いた。