才色飛車〜利き駒の調べ〜
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「えっと…小田原に行ったとき、城下町にも行ったんです。そこで豊臣の軍師、竹中半兵衛さんに逢いました」
「なっ…」
「あのmask野郎にか…!」
「まぁ色々あって一緒にお茶することになりまして。私は身分を偽ってましたし、あちらも"半兵衛"としか名乗らなかったんですけど…」
半兵衛との出会いから、小田原の偵察に来ていたのではないかという考えと、これから何かしら小田原に仕掛けてくるのではないかという疑問を話す彼方。
一同は真剣な様子で聞いていたが、彼方の話が終わると真っ先に政宗が口を開いた。
「Shit!竹中の野郎…!」
「うむ。一体何を考えて…」
「俺だってまだ彼方と茶屋に行ったことねぇのに…!」
「「「………」」」
「俺のhoneyに手ぇ出すとは上等だ…!今度会ったときにはただじゃ置かねぇ…!」
「右目。どうにかせよ」
「……政宗様!!」
暴走した政宗を止める小十郎。
彼方はその様子を苦笑しながら見ていた。
「ともかく…竹中が動き出している。豊臣の方が近々なにかしら動きがあるのではないか」
「うむ…織田は変わりないようだからな」
そうしてひとまずは優先して豊臣の動きに注意しようということで話がまとまった。
そしてどう対抗していこうかと半ば雑談混じりに話していると、彼方がほぅ、と息を吐いた。
続けて少し照れながらうっとりと呟く。
「半兵衛…綺麗な手だったな…」
深い意味があって言ったわけではないのだが、過剰に反応したのは周りの男たち。
「な…っ、彼方殿は竹中殿ような方が好みで…!?」
「No!ダメだ!アイツはダメだ!とんでもねぇ男だぜ!」
「えー…結構優しかったよ?」
「彼方ちゃん騙されてるよ!助けたっていうのだって絶対下心があったんだよ!」
「うーん…?」
「Ha!下心があるのはテメェも同じだろうが猿!」
「はぁ!?ちょっとなにそれアンタにだけは言われたくないね!」
「てめえ政宗様になんてことを!」
「下心など破廉恥な…っ!」
ぎゃいぎゃいと揉め始めた政宗、小十郎、幸村、佐助。
そんな四人を小太郎が驚くほど呆れた目で見ていたが、彼の目が隠れているため気づくことはなかった。
「皆の手も好きなんだけどなー…って聞いちゃいませんね」
「そなたが突拍子もなくあのようなことを申したからよ」
「そうですかねぇ。あ、そーだ元就さん」
「なんだ」
「帰ったら城下町行ってみてもいいですか…?」
小田原の城下町を歩いて、その様子に感動した彼方。
元就の治める地ではまだ城下町を見たことがなかったので、興味が出てきたのだった。
「城下へか?そういえばそなたはまだ行ったことがなかったのだな」
「はい」
「よかろう。だがくれぐれも目立つような真似はするでないぞ」
「分かってますよーぅ」
周りの騒がしい状況を気にすることなく話を進める二人。
そんな二人を信玄は微笑ましく見つめていたのだった。