ギアス

□母性本能(子ルル+コーネリア)
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ルルーシュは木陰で一人本を読んでいた。

最近ルルーシュには妹が出来た。名前はナナリー。
とてもかわいらしい名前だなとルルーシュは思ったが、名前以上にナナリー自身が可愛いと思った。
初めて出来た血の繋がった妹に対し、ルルーシュは自分がナナリーを守ってあげようと自分自身に誓った。

ルルーシュにはナナリー以外にも妹はいるのだが、何ヶ月かしか違わない妹や、顔も見たこともないような妹ばかりだったし、
なにより、同じ母親から生まれた妹が出来たことがとても嬉しかった。

しかし、ナナリーが生まれてからはマリアンヌ(ルルーシュとナナリーの母親)がナナリーに付きっ切りになってしまった。
マリアンヌもナナリーも2人とも大好きなルルーシュだが、マリアンヌとナナリーが少しずつ嫌いにもなっていた。
母親を取られた怒り、妹ばかり気にして自分の事をカマってくれない苛立ち。
こんな気持ちがルルーシュの心の中で渦巻いていた。

そんな気持ちを落ち着かせるために一人で静かに本を読んでいたが、やっぱりというか全く本に集中出来ずにいた。
そんなルルーシュに1つの大きな影が近づいてきた。

「ルルーシュじゃないか。こんなところで何をしているんだ?」

と、声をかけてきたのはブリタニア帝国第2皇女コーネリア・リ・ブリタニア

「こんな端っこで一人で何してたんだ?」

ルルーシュよりも10歳も年上のコーネリアが優しい声で尋ねたきた。

「・・・・・・」

しかしルルーシュはなかなかしゃべろうとしない。
だがそんな時、遠くの方から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。そして、それをあやしているような声も。
それを聞いたルルーシュは、苦虫を噛潰したような顔をした。

「ふふっ」

そんなルルーシュの顔をみたコーネリアは我慢できずに噴出してしまった。

「何ですかいきなり笑いだして。」
「いやぁ、悪い。あんまりにもお前が可愛いから笑ってしまった。」
「はぁ?」

コーネリアの言っていることが理解出来ないルルーシュは困惑していた。

「なんでお前がこんなところに一人でいるのかがわかったんだが、その理由が可愛くてつい笑ってしまった。すまんな。」

なんでわかったんだといわんばかりの顔で、ルルーシュがコーネリアを見つめるとまたコーネリアが笑い出した。

「姉上いい加減にして下さい。」

コーネリアは「すまんすまん。」と言いながらまだ笑っていた。
笑いも収まったところでコーネリアが真剣な顔でルルーシュに尋ねた。

「ルルーシュ、お前マリアンヌ様をナナリーに取られたと思って落ち込んでいただろ?」
「なっ、何でわかったんですか?」
「お前の考えてることなんて全部お見通しなんだよ。」

と、コーネリアは誇らしげに言っているが、内心は「お前の言動を見てれば誰でもわかるよ。」と笑っていた。

「マリアンヌ様がナナリーだけを可愛いがって、自分の事はどうでも良いと思ってると思っているのだろう?」
「・・・はぃ。」
「だがなルルーシュそれは違うぞ。マリアンヌ様はお前の事も愛しているんだぞ。」
「でも・・・、最近は俺が母様とお話をしようとしてもナナリーの面倒ばかりで、俺の話を聞いてくれない・・・」
「それはナナリーがまだ生まれたばかりでなにも出来ないから、母親のマリアンヌ様が面倒をみてあげないといけないんだ。それはわかるだろ?」
「・・・はぃ・・・」

この時ルルーシュは初めて自分の胸の内を明かした。
今まで一人で考え、悩み、苦しんできたせいか、誰かに自分の気持ちを打ち明けたことで少し気持ちが楽になった気がした。

「本当はルルーシュお前もマリアンヌ様と一緒にナナリーの面倒をみないといけないんだぞ?」
「俺も・・・ですか?」
「そうだ。兄や姉というものは弟や妹の面倒をみてあげて、守ってやらねばならないんだ。」
「それでは姉上もユフィを守ってあげているのですか?」
「当然だ。私はユフィの姉だからな。」
「だから、お前もナナリーのことを愛し、守らないとダメだぞ。」
「でも・・・」

ルルーシュはコーネリアと話せたことで、マリアンヌとナナリーに対する思いの整理は大分できた。
だが、それでもまだ納得できないことがある。
それを感じ取ったコーネリアがルルーシュに提案する。

「それじゃあルルーシュ、私がお前の母親代わりになってやる。」
「・・・はい?」
「だから、私がマリアンヌ様の代わりをやってやると言ってるのだ。それとも、私では不服か?」
「い、いえ。そういことではなくて・・・」
「それでは決まりだ。これからは寂しくなった時や、甘えたくなった時は私のところへ来い。良いな。」
「わ、わかりました・・・」

ルルーシュは内心かなり嬉しいのだが、恥ずかしさの方が勝ってしまい素直になれないでいた。

「では早速甘えて良いぞルルーシュ。私が抱きしめてやるからこっちにこい。」
「い、いいですよ。」
「恥ずかしがる事はないんだぞルルーシュ。」
「恥ずかしがってなどいません。」
「ではこっちに来い。」
「だからいいですってばぁ。」

恥ずかしがってコーネリアの申し入れを頑なに断っていたルルーシュだったが、
無理やり抱きしめられてしまうと体力の差は歴然で、最終的には大人しく捕まっていた。
そんなコーネリアの腕の中のルルーシュの顔はとてもうれしそうな、母親に抱きしめられている子供の様な顔をしていた。

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