ギアス

□依存少女(ナナリー→ルルーシュ)
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ナナリーが総督に就任してから一月程経ったある日。ナナリーの部屋に入った枢木スザクは自分の目を疑った。
総督であるナナリーの部屋の家具やティーカップやらなにやらが壊れたり割れていた。もう滅茶苦茶だった。

「ナナリー!大丈夫?怪我はない?」
「?・・・どうしたんですかスザクさん。」
「どうしたんですか?って、部屋が・・・」

スザクはまず最初にナナリーの安否を確認しようとした。
だが、ナナリーは何をそんなに慌てているのだろう、という顔をしている。
ナナリーに部屋の状況を教えると本当にビックリした様子だったので、本当に部屋が荒らされている事に気づいていないみたいだ。
政庁のしかも総督の部屋に強盗に入るバカはいないとは思うが、新総督を暗殺しようとするイレブンが襲撃してきた可能性は十分に考えられる。
しかし、良く考えてみれば総督の部屋に侵入する事などそう簡単に出来るものではない。黒の騎士団でもない限りはっきり言って無理だろう。しかし、黒の騎士団は今は中華連邦に国外追放されていてエリア11にはいない。
そうすると誰がこんな事をしたのかという疑問が出てくる。昔友人だったルルーシュに体力バカと言われていただけあって、頭の方はあまり良くないスザクがそのない頭で考えるがさっぱりわからない。
わからないことをいくら考えてもきりがない上に、金品が盗まれていたり、総督に危害を加えられてないことを理由にこの件については表ざたにしない事にして内密に処理した。

ナナリーは総督に就任してから慣れない仕事に四苦八苦していた。今は行方不明の最愛の兄に会っても恥ずかしくない様に自分なりに一生懸命頑張ってはいるが、なかなか思うようには行かない。それもそのはずだ、ブリタニアの皇族である自分がナンバーズの為の政治をしようとしているからだ。
本来ならブリタニアの為の政治をしなければならない立場の自分がこんな事をしていれば回りから白い目で見られてもしかたがない。
しかし、それでもナナリーはブリタニアだから、ナンバーズだからというのが納得できなかった。誰もが平等に幸せに生きていける世界があると信じている。優しい世界が作れると信じている。
その優しい世界を作るために覚悟を決めてエリア11の総督に志願した。その覚悟は生半可なものではなかった。しかし、ナナリーもまだまだ子供なのだ。心が折れそうになる時もある。
そんな弱気になった時や、自分が不甲斐無く感じ全てを投げ出したくなった時は決まって大好きな人のことを思い出す。
幼い頃から常に傍にいてくれた、常に愛情を注いでくれた、常に危険から守ってくれた、この世で最も愛する人のことを。

「お兄様、貴方は今何処にいるのですか?」
「お兄様は私のことを見守ってくれています?」
「今の私を観たらお兄様はどう思われるでしょう?」
「全然ダメだと叱られてしまうでしょうか?」
「お兄様ならもっと上手く出来るでしょうか?」
「お兄様はなぜ私の傍にいてくださらないのでしょうか?」
「こんな出来の悪い妹に嫌気がさしたのでしょうか?」
「お兄様は私のことを嫌いになられたのですか?」
「私の傍にいるのが嫌にやったのですか?」
「お兄様は私が皇族に戻ったのが気に入らないのですか?」
「お兄様は私がエリア11の総督になったのが気に入らないのですか?」
「私が昔の様に何も出来ない女の子に戻れば帰って来てくださいますか?」
「私が総督の仕事を全て投げ出してお兄様の元へ行けばまたずっと傍にいてくださいますか?」
「なんでお兄様はナナリーの傍にいてくださらないのですか?」
「なんでお兄様はナナリーを守ってくださらないのですか?」
「なんでお兄様はナナリーが泣いているのに慰めに来てくださらないのですか?」
「ナナリーよりも大事な人が出来たのですか?」
「ナナリーのことなんてもうどうでも良いのですか?」
「お兄様はナナリーがいなくても平気なのですか?」
「お兄様の世界にナナリーは必要ないのですか?」

私にはお兄様が必要不可欠なんです。お兄様が傍にいてくれないと生きていけないんです。お兄様のいない世界なんて意味がないんです。
お兄様はナナリーの傍にいないといけないんです。ナナリーが落ち込んだ時は慰めてくれないといけないんです。ナナリーが寂しい時はぎゅって抱きしめて頭を撫でてくれないといけないんです。
だから早くナナリーを迎えに来て下さい。ナナリーを一人にしないで下さい。お兄様が傍にいてくださらないと頭がおかしくなりそうなんです。だから早くお兄様のその暖かい腕でナナリーを抱きしめに来てください。


「ナナリーも仕事に慣れてきてこれからもっと大きな仕事を任されるようになるだろうから僕がもっとサポートしないとな。」
「失礼します。」

と、ノックをした後、枢木スザクは総督であるナナリーの部屋の扉を開いた。するとそこには部屋一面にティーカップの破片やらなにやらが無造作に落ちていた。

「ナナリー!大丈夫?怪我はない?」
「?・・・どうしたんですかスザクさん。」

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