リクエスト部屋

□はじめてのチュウ
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ここ最近、獄寺の機嫌が悪い。
相変わらず綱吉にたいしてだけは愛想がいいものの、それでも苛立ちは隠しきれないのか、ふとした瞬間に凶暴な視線を周囲に投げている。
下手に絡めばガンをつけられ、刃向かえば「やんのか?あ?」と脅される。ただでさえ恐ろしいと評判なのにクラスの全員が何事かと震え上がった。日ごろは獄寺に熱い視線を遠くから送っている女子達も、怖すぎる雰囲気にいつもより更に遠巻きだ。

「…なんとかしなさいよ、山本」
「俺!?」

獄寺に怯えきっているクラスメイトを代表して、黒川花は何故か山本に声をかけてきた。
黒川が代表と言うのもおかしいのだが、山本に言いに来たことにも驚く。普通なら獄寺が頭の上がらない綱吉に言うのではないだろうか。
いや、でもこの場合は山本に言うのが真実正しいのだが、隠しているはずの事実を知られたのかと山本は心臓が止まるくらいびっくりしたのだ。

「な、なななんで俺?ていうかなんで黒川?」
「ていうかあんたは驚きすぎなのよ」

山本の不自然な驚きように黒川が首を傾げる。山本は慌てて体裁を取り繕った。
どうも黒川自身、何故自分が代表なのかわからないらしい。損な役回りだ。そして不機嫌そうに、実は綱吉にはもう言ったのだと教えてくれた。

「沢田も獄寺の不機嫌の理由知らないの。聞いてみたけど教えてくれないって」

綱吉曰く、「もう言ってる。でも俺が言っても俺の前で機嫌悪いの隠すだけだから、解決にはならないと思うな」ということらしい。
なるほどと山本は唸った。確かに、綱吉の前では愛想良くしている。それに綱吉に聞かれたところで獄寺は絶対に理由を言わないだろう。理由が分からなければアドバイスも機嫌を取ることも出来ない。

「獄寺とまともに喋れるのって沢田とあんただけなんだから、沢田が駄目ならあんたしかいないじゃない。それにあんたのほうが頼りになりそうだし」
「へ?俺が?」

思わず山本は頓狂な声を上げる。
綱吉よりも頼りになるだって。そんなはずないではないか。

「だってあんた良い感じに空気読まないでしょ。いつも強引に獄寺を言いくるめてんだから上手い事やってよ。まあ、期待はしないけど」

言いたいことだけを言い捨てて黒川は山本に手を振って去っていく。終始面倒くさそうだったことから、黒川自身は獄寺のことなどどうでもいいのだろう。意外に面倒見がいいのかもしれない。
取り残された山本は頭を抱えた。なんだか色々傷つくことを言われた気がする。

(空気読まないか…確かに読んでないかもなあ)

あの獄寺に近づくため、意識して空気を読まない事だって少なくないのだが。
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