リクエスト部屋
□Slowly and Impatient
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自分の情けなさに吐き気がする。
電気を消した室内に、粘着質な音が響く。静かな空間に、それはひどく大きく聞こえた。
まぶたの裏にゆれる銀髪が、山本を追い上げる。
『山本…、お願い…っ、あ』
「っ…」
『なぁ…早くっ…ああっ』
「獄寺…っ」
愛しい相手の名を呼んで、山本は欲望を吐き出した。
息を整え、吐き出されたものを感慨の無い瞳で一瞥する。ため息をひとつ落として、乱暴にふき取った。
一人の行為の後はむなしさしか残らない。
しかも誰かを思いながらでは、なおさらだ。
「獄寺…」
どこまでも気が強いところも。
どこか危うささえ感じさせる水彩のような色合いも。
タバコをくわえる形の良い唇も。
この10年、ずっと思い続けてきた。
「はあ…情けね」
想像ばかりがたくましくなっていく。
10年という時間は、中学生だった山本達を大人に変えた。もう、思うだけでは辛いのが現実。
触れる勇気もないくせに。