リクエスト部屋

□Wait for you
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「隼人ちゃーん!」

追いかけてくるハルの声に、隼人は思わず舌打ちをした。
隼人は今、ハルから逃げているところだ。隠れても隠れても見つかってしまう。こういう時の彼女は信じられないくらい鼻が利く。

(『ちゃん』付けはやめろっつってんだろ!)

逃げながら、隼人は眉間に皺を寄せた。
明日は隼人の誕生日だ。ボンゴレではそれぞれの誕生日にはパーティーを催す。ファミリーの親しい仲間内で集まるものだが、一応それなりに装わなくてはならない。
主催者は綱吉だ。隼人も例外に漏れず、毎年祝ってもらっている。
だが隼人は、自分の誕生日だけは毎年苦手だった。
他の人間が主役の時は大抵ジャケットにパンツで参加している。だが自分の時はそうは行かない。京子とハルが主役らしく装えと言って聞かないからだ。しかも毎年違うドレスを作り、京子と綱吉からのプレゼントだと言われるのだから断るに断れない。
ドレスは嫌いじゃないが、照れくさいし面倒くさい。しかも毎回、誕生日前日にハルがやってきてドレスの試着と調整をする。隼人はそれがイヤで、今日も逃げ回っていた。

「そうそうサイズなんかかわらねーんだから何回も着なくてもいいだろーが」

手近なところに隠れて隼人は小さく呻いた。
毎年思うが、ハルと京子に遊ばれているような気がする。
そこに、影が落ちた。

「見つけましたよ、隼人ちゃん!」
「げ!」

ハルの横をすり抜けて逃げようとするが、がしっと腕を捕まれた。
意外に強いハルの力に吃驚する。人並み以上に強いはずの隼人ですらふりほどけない力をハルはなぜか持っている。

「毎年毎年、手がかかりますねえ。いいかげん素直になって下さい」
「うるせ。着るのなんか本番だけでいいじゃねえか!
「だめです。アクセサリーとか髪型とか、全部ハルと京子ちゃんでやるんですから」
合わせておかないと当日迷っちゃうじゃないですか。

この会話も繰り返し行われている。
いい加減諦めて欲しいと、ハヤトは思う。

「隼人ちゃん、美人ですからやりがいがあります」
「絶対遊んでるだろ…」
「そんなことないですよ。大体ツナさんも山本さんも楽しみにしてるんです」
「ぐっ…」

綱吉を引き合いに出されては叶わない。
しかも山本のおまけ付き。正直、山本が喜ぶのならいいか、とか思ってしまう自分もいたりするのだから始末が悪い。
これも毎年のことなのだが、諦めずに逃げ回る隼人にハルは溜息を吐いたのだった。
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