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□First Kiss
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あれから何回かキスをした。まだ数えることができるくらいだけど。
栄口とするキスはとても気持ちがいい。できることならずっとだってしてたいくらいだ。
そんな物思いに耽ってると栄口がなおも面白がってからかってくる。
「そーなんだけどさ。でもやっぱり阿部が緊張って似合わねー。」
「お前だって逃げたじゃねーか。」
「あれは、」
「緊張したんだろ。そう言ってたもんナ。」
にこやかに笑ってやると栄口は怒ったような不貞腐れた顔をする。
「俺はいーんだよ。緊張しやすいんだから!」
「お前その癖治ったんじゃねーのかよ。」
「それとこれとは別だろ!」
顔を突き合わせて憎まれ口を叩きながら、栄口がぶすっと不貞腐れるから。それしかできないようにぎゅうぎゅうと抱き寄せて、額に口付ける。
栄口のおでこはとても形がきれいでところ構わず触りたくなるくらいに。阿部のお気に入りの場所だ。
特に髪の毛の生え際、おでことの境目のラインが大好きだ。
ここに触ると栄口はくすぐったいらしく目を細めながら笑うのだ。今だってそう。
唇にするキスはとても緊張するのかいまだに少し強張る栄口がここにされるキスだけは違うのかはにかむようにうれしそうに笑うから。
阿部にとって栄口の額、おでこにするキスはとても大切なもの。
時に照れくさくって叩いてしまうこともあるけれど。
「お前ここにされんの好きだよな。」
思ったままを口にしたら栄口は途端に真っ赤になって阿部から距離を取って。
「なっばっかじゃねーの!!」
大声で抗議されたって阿部には照れ隠しにしか見えない。
「照れんなよ。」
「照れてねーし!」
「ま、俺はお前が相手ならどこだっていーけどさ。」
それは阿部にとって本当に本心で。
キスだってできたらもっとたくさんしたいし、それ以上だって勿論期待する。
でも栄口が相手だからこそ、なのだ。
すべて。
もう一度額に唇を寄せて、笑いかけると栄口が動いた。
ちょっと勢いをつけすぎたのかほとんどぶつかると言ったほうがいいような感触が阿部の唇に残った。
まだキスするのも滅多にないけど、されるのなんて皆無と言っていいかもしれない。
そんな栄口からの紛れもないキス。
驚きすぎて思わず呆けながらも栄口を凝視する。
恥ずかしさは後からやってきたようで、阿部は目の前の顔がゆっくりと色づいていくのをしっかりと見ることができた。
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