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□君の犯行動機
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放課後の部活を終えてへとへとへろへろになって帰る途中で寄るコンビニで、事件は起きた。
それは阿部にとって、ではあるのだけれど。


今日も今日とてきっつい練習の後の貴重な栄養補給。
コンビニの駐車場でそれぞれに手にした食べ物を食べていると、三橋を巻き込んで田島が騒ぎだし花井が必死に制止している。
いつもと変わらない日常。
もうそろそろ花井だけでは手に負えなくなりそうだと見越して阿部が田島を捕獲しに栄口の隣から離れた。
「田島ァっ」
「おー。阿部。」
田島の勢いに阿部の怒鳴り声が混じりより一層騒々しさを増す。
「花井も阿部も毎度毎度大変だよねー。」
栄口は今日も平和だなーなんて暢気に思っていると、いなくなった阿部とは反対側の隣に座っている水谷から声をかけられた。
「だね。」
ほのぼのしながら水谷と栄口が笑いあう。


ああ、隣が栄口ってだけでなんか安心するっていうかほわっとなるっていうか。
うん。癒される。
そんなことを水谷が思っているとも知らず、栄口はいまだ騒いでいる田島と怒鳴る阿部とその隣で今にも頭を抱えそうなくらい悲愴な顔した花井に、間に挟まれてきょどきょどしている三橋を微笑ましそうに見ている。
「栄口も止めにいく?」
あんまりにも熱心に見てるから気になって聞くと栄口はきょとんと水谷を見る。
栄口って、普段しっかりしてるから気づかないけど結構童顔?なんて思ったり。
「俺はいいや。あっち行ったら体力消耗しそーだし。」
「ここは避難場所?」
「まあそんなとこ、かな。」
にっと笑いかけられて水谷はうれしくなる。
「水谷のそれって新作?」
「そうなんだー。おいしーよ。食べる?」
水谷が手にしている今日の食料は期間限定の新作のチョコレート菓子だった。わりとおいしかったので栄口に勧める。
「ん、一個ちょーだい。」
「ほい。あーん。」
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