初恋にまつわる5題

□こんな想い知らなかった
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生きることって結構楽しいと思う。
そりゃ仲間が死んだとか大怪我負ってめちゃくちゃ傷が痛いとか肌が荒れたとか人に嫌われたとか。ちょっと考えただけでもいっぱい悲しいこと出てくるけど、それを補ってあまりあるくらいのわくわくすることが世界には沢山あると思うんだ。

いいこと6割、やなこと4割。



基本楽天家の俺。




「ラビ、今度お休みいつ貰えるかわかる?あたしも一緒に時間を過ごせるようにシフトを組むわ」

科学班に所属する俺の彼女、オリビアは頭脳明晰、明るい性格で誰からも好かれていた。こげ茶のふんわりカールした髪とスカイブルーの瞳は俺のお気に入り。勿論スタイルは抜群だ。


「この任務がおわったらしばらく入らないはずさ。4日もあれば帰ってくるさ」
「そっか。じゃあそれまでに仕事かたずけるね!!最近忙しくてあんまりのんびり出来なかったもん。寂しいよ」
頬を膨らませて上目づかいにこちらを見るオリビアを純粋に可愛いと思う。
「帰ったらいっぱい愛するさ」
「そういう意味じゃないッ!!」

殴るまねをする彼女の手首を捕らえてふれるだけの優しいキス。
それだけでも真っ赤になるオリビア。
「んじゃー行ってくるさ」
「ま

「そういえば、今回ペア?単独?」
「えーと…手の空いてる奴と組ませるって言ってたからなぁ。誰だろ」
「今そんなに人いないよ。アレン君とリナリーちゃん組んでるし、クロウリーさんとミランダさんも出てるし。じゃあ、神田さんじゃない?」
「もうすぐ船着場に着くからわかるさ」

そこを曲がれば、ほら、流れる水の音と黒いロングコートのエクソシストの背中。

「ビーンゴ」
「お久しぶりです、神田さん!!」

女顔負けの美人な日本男児、神田ユウはこちらを振り向いてチッと舌打ちをした。
「オリビアか。こんなとこに何しに来た」
俺の存在は軽くスルー!?
「見送りですー」
「ここは結構冷えるんだぞ。風邪ひくといけないからさっさと中に戻ってろ」
「このくらい大丈夫です!!なんてたって科学班ですから!!」

俺抜きで会話が進んでいく。なんだか二人とも…楽しそう。


なんとなく、苛々、した。


「…オリビア…」
「何?んっ」
不意のキスをした、彼女に。
どうしてだかわからないけど。
神田ユウに見せ付けるように。
「人のいる所でッ…やめてよッ」
頬を染めて怒る彼女を見ても…まだ、おさまらない。


苛々苛々苛々苛々。


はぁ、とため息を



船に押し込まれる。すぐに出発し流れにのった。オリビアはもう見えない。


ただまだ胸は疼く。
苛々苛々苛々苛々。







「なんだよ、黙りこくって。気持ち悪いな」
「気持ち悪いはないさユウ」

汽車に乗っても一言も喋らない俺を不審に思ってユウが声をかけてきた。
さっきの、あのイラつきの正体が気になるんだ。もやもやした不快感。

「オリビアはいい奴だと思うぞ」

ユウは勝手に俺とオリビアの関係に悩みでもあるのだとでも推理したらしい。焦ったように話出す。

「会うといつも笑ってお疲れさまって言うし、気さくだし。俺がゴーレム壊しても文句言わずに直してくれた」


ヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテ

「笑顔が可愛いしな」

ソレイジョウハナサナイデ

「俺もお前らはお似合いだと思ってる」


アナタハワタシノコトヲナニモシラナイクセニ



そんな風に俺を心配しないで。そんな風に俺にむかって笑顔を見せないで。今日気づいた苛立ちと心の奥底の願望を基に無駄に回転の速い頭が導いた答えをあなたに伝えてしまうかもしれないから。


あの時彼女にキスをしたのは彼の目から彼女を除く為。
彼の視界に自分以外はいれたくない。
そんな利己心、今更なのに。



こんなのフェアじゃない。
俺だけが一方的にユウのことを想って、ユウの行動に一々嫉妬するなんて。

恋ってもっと平等にあるべきものじゃないの?

もっと楽しくてうきうきするものじゃないの?




ユウがつまんなさそうに窓の外を見ている。
こんな想いを人にさせておいて!!

基本楽天家の俺は彼の向かいで悶々と悩むのであった。






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