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□残酷な行為(惨極な好意)
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俺って結構いかれてるかなぁ?
一方ではAKUMAを率いてエクソシスト狩りをして。
もう一方では人間って面白い、とか言ってまぎれこんでみたりして。
エクソシスト狩りをするってことは結果的に人間をも殺してることになってて。
何?俺って何がしたい訳?
そんなことを考えてたらなんだかちょっと鬱状態になってたみたい。心配して家族が「お使い」したら気も紛れるだろうって、ノルウェーまでニシンの薫製を買いに行くことになった。
これって優しさ?それともバカにしてんの!?
でもちゃんと買いに行ってあげてるあたり自分ほんとイイ人だと思う。
だけどそこであの人と会っちゃったんだよね。彼だか彼女だかいまいちわからないけど、綺麗な東洋人…神田に。
ノルウェーにだってAKUMAはいる。国境なき千年公の活躍によって生まれた現地のAKUMAに美味しいニシンの薫製を紹介してもらって(マジ助かった。だって俺学ねぇからノルウェー語とかわかんねぇし)絵本の挿し絵みたいなメルヘンな景色に癒されて、生きる希望がわいてきた!!明日からがんばるぞ☆ってゆー気持ちになった時に、
エクソシストに遭遇しちゃうんだからね…。
そのエクソシスト…神田は俺のこと全然わかってないみたいだった。
俺は黒のロングコートですぐ気づいたけど。
神田は一人で…淋しそうな表情をして湖を見ていた。
あんな悲しい表情をする人間を初めて見た。
みてるこっちが辛くなる。
だから…だから声をかけた。
「お嬢さん、失恋?そのまま入水自殺とかしないでね」
「うるせぇ。あっち行け不審者」
うわぁ見た目通りのクールな性格…。っていうか初対面で不審者はひどくない?つくづく損な役回りの俺。
「だってすごく悲しそうな顔してるよ?心配になる」
美人はどんな表情も絵になるけどね、人間やっぱり笑顔が一番だと思うんだ。
黒髪のエクソシストは少しためらった後、ゆっくりと言葉をつむぐ。
「…自分のこと信じきれる、確固たる根拠が欲しい。正しいと言いきれる、理由を掴みたい…。ただそれだけなんだ」
戦場での善悪とはなんだろう。今の行為は間違っていない保証がどこにある!?悪は、自分かもしれない!!
「不安、なんだ…」
エクソシストとノアって意外と仲良くできるかも。俺と同じじゃん。不覚にも親近感をおぼえてしまった。
「…あんた、名前は?」
「………神田」
ふーん。そんだけしか教えてくれないんだ。
「神田…ね。覚えた。俺はティキ。あんたの不安、俺なら解決できるかもしれないね。まぁやってみるから楽しみにしててよ」
「どういう意味だ…?」
「いずれわかるから。またね」
はやく帰んないと。やること出来た。
「千年公〜、仕事下さい。俺本気で取り組むんで」
「おヤVついにティキポン真面目になったんですネV嬉しいでスVV」
「僕のお使い大作戦が成功したんだよ〜」
「うるさいロード。それより仕事!!」
自分が信じきれないなら、神田。何も考えなければいいんだよ。ただAKUMAを破壊することだけ考えて、苦しみなんて感じないようにすればイイ。
はっきり認めよう。俺は君に惚れてる。まさかこの年で一目惚れとかびっくりだけど、好きなんだ。
だからAKUMAをもっと造り出すよ。それで君の苦悩を、悲嘆を取り除いてあげる。君に笑って欲しいから…。