ゲーム系SS

□届く想い 届かない言葉
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 彼がこの街に戻ってきたから、12の欠片が目覚めた。

 彼がこの街に戻ってきたから、誰かが影時間に堕ち、誰かがペルソナ能力に目覚めた。

 彼が私達と12の欠片を倒して1つにまとめてしまったから、彼の中の死神が目覚めた。

 彼の中の死神が目覚めたから、ひとつの選択が彼に与えられた。

 死神を殺すか、殺さないか。
 その選択を決定できるのは彼。

 死神を殺せるのは、死神に人間の属性を与えた彼だけ。

 彼が選ぶ。
 生か死か。
 彼が生を選べば絶望への時間を自覚し続ける。
 彼が死を選べば安穏とした忘却が待っている。

 そして、どちらを選んだとしても結局は皆死ぬのだ。


 彼がこの街に戻ってきたから。

 だから、この世界の滅びが決定付けられた。


 お前のせい、と誰かが言った。
 俺のせい、と彼は思う。
 違います、と私は言う。


 全ては、彼を巻き込んだ私のせい。

 彼の中に死神を封じて、彼を"特別"にしてしまった私のせい。


 ごめんなさい、巻き込んで。
 ごめんなさい、あなたを守ると言ったのに、一番そばにいなくてはいけない時にそばにいなくて。

 あなたの傷ついた心の叫びが聞こえます。
 私にそんな機能が付いてない以上、これは錯覚なのでしょう。

 でも、それでも。
 私は錯覚だとしても、あなたに傷ついて欲しくないのです。


 だから、声を、言葉を、あなたに、届ける為に……


 でも、私の言葉は届かない。
 私のカラダは、今は遠く離れたラボ。


 彼の想いはこんなに届くのに。

 私の言葉は届かない。


***** *END* *****

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