恋のステップアップ
□恋をしてみよう
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おれは今、猛烈に寂しい。
どんくらい寂しいかというともうこんくらいだ。
今手であらわしてるんで察していただけると嬉しい。
恋だのなんだのという時期は野球に散り、部活に散り、ついには友人がために散った。
だってお友達の山ノ井くんたらとっても可愛くて、俺の胸のたかなりっていったら。
高校生3年の引退後、いったーい経験もなんとか思い出になったというとろで。
素敵な山ちゃんと残ったスクールライフを満喫しようとしたその矢先に!
山ちゃんに彼女ができました。
正直なところ嫉妬で噛みしめすぎたハンカチがぐしゃぐしゃになるくらい荒れた。
なんだってどこの馬の骨ともわからない子に山ちゃんをとられなきゃいけないんだ…あ、いや、山ちゃんの彼女と仲良いんだけどね、俺。
しかしね!
しかしだよ!
今まで山ちゃんとばっかりつるんできた俺は寂しくて仕方なくてしかもぶっちゃけ引退した途端彼女持ちとかどんな勝ち組だよとか思うわけで。
(あ、本音でた。)
つまり恋がしたい。
猛烈にしたい。
「ってわけなんですよ山ノ井くん」
「成る程、わかりました本山くん」
かたく拳をにぎりしめながら力説してする俺の目の前にはやっぱり山ちゃん。
しかし携帯をいじってる、あぁ泣きたい。
「いいな、山ちゃんはさー」
「つくりゃいいじゃん、彼女」
あきれたようにいちごミルクがはいったパックからのびるストローをちゅーちゅーすっている唇からため息がもれた。
うわ、いやらしい!
「違うよ、運命的な出会いが必要じゃんか」
「意味わからんよ、君」
頭を抱えてアッハーってわざとらしく笑われる。
運命を笑う奴は運命に泣くと思うんだぜ。
「本やんこないだ告白されてたじゃん、駄目だった?」
「え、嫉妬?」
「ごめん俺今この瞬間すぐにジュース買ってきたい気分なんだ」
ガタリと立ち上がる山ちゃんに当たり前のようについていく。
心底嫌そうな顔をされたが、俺からしたらただの癒そうな顔だ。
(あ、俺今うまいこと言った。)
*