*sHoRt*

□ジンの子育て。
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失ったのは大事なものだった。
手に入れたのは残酷な現実だった。

「ふわぁ……?!」
ぐぃっと伸ばした手が、小さい。
何かがおかしい。
視界に入った手を握ったり開いたりしてみる。
思いのまま動くその手は残念ながら自分のものらしい。
「な、なんで?!」
立ち上がろうとすると勢いを付けすぎたのかそのまま後ろに転んでしまった。
その結果視界に入ってきたのはこれまた小さな足だった。
それと、
「うるせぇ……」
横に寝る長い金髪の男、ジン。
「うるしゃいじゃなくてっ」
早く喋ると呂律が回らない。
悔しくなって金髪を思いっきり引っ張る。
「……殺されてぇか?餓鬼」
やっと起き上がったジンの瞳に映るあたしの顔。
アルバムの中で見た顔はすぐに消え、再び瞳は閉じられた。
「って寝ちゃう?ねぇ、そこで寝ちゃう?」
寝起きが悪いのはあたしのせいだと前に言われたので諦めることにして、あたしは鏡を求めてバスルームへ向かった。


「あちゃー……これじゃあ、どっかの探偵くんみたいだよ」
こんなことしそうなのは一人しかいない。
「クスクス……あら、可愛いベィビーだこと」
振り返るとそこにはやっぱりベルモットがいた。
ベルモットはジンが好きらしく、ジンの恋人であるあたしは邪魔だそうだ。
(だからって毒をもるなんてひどいよ……)
「安心しなさい、キュートベィビー?毒は毒でも体が縮むだけで害はないわ。もちろんモルモットの実験での話だけど」
害はないって、体が縮むことが害だと思うんですけど……。
あたしはその言葉を飲み込む。
美人は敵にまわすと怖い。

もう一度鏡に目を向けると鏡の中のベルモットと目が合った。
さも愉快そうに笑うベルモットに不愉快になりながら改めて自分をよく見ると大体5歳児くらいの体だと推定できた。
「解毒剤はあるんでしょうね?」
「クスクス……シェリーなら知っているんじゃないかしら」
「肝心のシェリーは行方不明じゃない」
この人にこれ以上尋ねても仕方がない、そう思いあたしはジンの元へ戻った。

「よいっしょっと」
とりあえずジンの上に乗ってみる。
乗り心地は悪くない。寧ろなんだか気持ちよくって。
「ふわぁー……」
深く考えても仕方ない。
そう思い直しあたしはそのまま眠りにつくことにした。





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