■メモ小説1■
□勝負
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僕は本が大好きで、特に面白い本を見つけた時なんかは全く周りが見えなくなってしまう。
そうなると大体の人は怒ったり呆れたり、反応は様々だけど『読書中の久藤には関わるな』という結論に行き着く。
…はずなんだけど。
「なーなーなー、勝負しようぜー」
こいつだけはその結論に行き着かない。
木野国也。僕のクラスメイト。
何故かわからないけど僕をライバルと決めて何かと勝負を仕掛けてきては…勝手に負けていく。
変なやつ。
でも、不思議なやつ。
読書中に声をかけられるのは嫌いなんだけど、なぜか木野の声は嫌いになれないんだ。
むしろ、その声があると安心する。
僕は木野が好き、なのかなぁ?
本から目を離して木野を見つめてみる。
「お。勝負する気になったか?」
嬉しそうに顔が近づいてくる。
近いよ…。
「この本、司書室に運ぶの手伝ってくれる?」
「えぇーっ」
木野が漫画のようにひっくり返った。