無期限で君を下さい

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静寂の中ハックシュンッ!と、いきなり切原君がくしゃみをしたので、紙と睨めっこしてた私はビクッと肩を揺らしてしまい思わず切原君を見た。

「(…ビックリした…)」

「ったくもー…」

あの後私達二人は、『こんな酷い点数なのはお前たち二人だけだったぞ』と先生に言われ、居残りを命じられてしまったのだ。サラサラと白い紙に単語を書き綴っていく切原君と違って私の手は止まったまま

「やばいって分かんないって何これ。数学なんて滅びろ…」

切原君に向けていた視線を自分の机の上にある紙に向ける。数字の前に−や+が付いていたりxやyの記号が付いている問題がたくさんある。答えを出そうと必死に考えるが一向に解けそうになく頭を抱えたくなった

「(…切原君分かるかな…)」

望みは薄そうだが、きっと自分よりは出来るはず。そう信じ切原君に話しかけた

「ねぇ」

「…あ?」

単語を書く手を休めコチラを見る切原君。ちょっと悪いことしちゃったかな…と思いつつも聞いてみた

「…この問題なんだけどさ、分かる?」

「分かんねぇ」

切原君に見えるように分からない問題を指差しながら問いかけたら、すぐに最悪な返事が返ってきた

「何てこったい…」

「それよりアンタ、さっき心の中の声口に出してたぜ…?」

「え、嘘。数学滅びろって口に出してた?」

「おう」

「うわー…」

まさか口に出していたとは…問題が解けないショックと独り言を言ってしまったショックで軽く死ねそうだ。ゴツンと机に頭を軽く打ちつける。そのまま机に突っ伏した

「……アンタ何やってんだ?」

「数学と言う壁にぶち当たって絶賛やる気無くし中なんだよハハハハハ」

「さっきの問題は分からねぇけど他の問題だったら分かる。…かもしんねぇ」

「まじで?!」

突っ伏してた顔を勢いよく上げ、驚いている切原を無視して詰め寄った

「この問題は…こうで…だな」

「ふんふん」

「この問題は…確か教科書にあったはずだぜ」

「お、書いてある」

切原君に何問か教えてもらい、後は自力で頑張った。死ぬほど頑張った。決して大袈裟には言ってない。それほど大変だったんだ私にとって。
私が分からない問題は切原が教えてくれ、切原君が分からない問題は私が教えた。二人で協力したら何とか終わらせることができた

「うぉおー…何とか出来た…」

「…俺もだ…」

その頃には日が沈みかけていて綺麗な夕日が見える。まさかこんなにかかるとは…

「ありがとう、ワカ…切原君」

「…ん?」

「うん、何でもないよ気にしないで」

「?変なやつ。それよりこっちこそ助かったぜ!」

人懐こい笑みで切原君が笑う。それに私も返事をして笑い返した

「…あ!!」

突然切原君が叫びだす

「どうしたの…?」

「やっべぇ!もう部活終わっちまったかな?!」

「あー…んー…多分。でも一応行ってみたら?プリントは私が出しておくからさ、行ってきなよ」

「…いいのか?」

「うん」

そう言った瞬間パァアアアと切原君が嬉しそうに目を輝かせた。ま…眩しいな

「サンキュー!!」

切原君はお礼の言葉を述べると、鞄とラケットが入ってるバックを背負いすぐさま教室から出て行った

「頑張れ〜」


*居残りで芽生えた友情


(さて、プリント提出しに行くか)


(あ、そう言えば俺、アイツの名前聞いてねぇや…!!)

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