銀魂
□恋話
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女子高生のほとんどが、恋の話というものが好きなのではないだろうか。私も(一応)女子高生、恋の話とは人並みに好きだ。
……ただ。
「で、どうなの? そろそろ吐いちゃった方が楽になるわよ」
「…うん」
こうやって尋問みたいに問い詰められるのはいかがなものかと思う。
そりゃ、他人の恋愛について興味を持つことはある。私だって友人の恋愛が気にならないと言えば嘘になる。
……けど。興味が深すぎるのも、どうかと思うのだけどなぁ。
聞いてくるのが妙ちゃんだからこうして相手をしているだけで、他の子だったら軽く流している。別に妙ちゃんが怖いだとか、そういうことは一切思っていない。本当に。
さて、妙ちゃんが興味津々な私の恋愛。
私には彼氏と呼べる人物はいない。まあ、いわゆる片想いというやつをしている。
片想いというだけでも興味を持つ人も多いようだが、妙ちゃんの場合は私の片想いの相手を知っている。そのため、余計に気になるのだろう。
ちなみに今は「彼のどこが好きなのか」という恋愛において最もポピュラーである質問の1つで、かれこれ30分ほど尋問に合っている。
「ぜん」
「全部とか言って逃げたら張っ倒すわよ」
「……実は優しいところとかデス」
妙ちゃん怖い。今、目が本気だった。
「そうなのー、乙女ねぇ」
「あは…ていうか、そろそろ自習した方が」
「あら、この状況で集中できると思う?」
「デスヨネー」
私の真面目な提案は却下された。
そう、今は自習中。Z組はいつものごとく無法地帯と化していた。誰一人として勉学に励もうなどという人物はいない。
私は小さく溜め息をついた。この尋問はまだまだ続きそうだ。
「それで沖田く」
「ちょ、ストーップ! 名前を出さないでよっ」
「ごめんなさい。ついうっかり」
「勘弁してください、もし本人に聞かれたりしたら…」
「本人って誰ですかィ?」
「今さら何言ってんの、沖田くんに決まってるで……」
「へぇ〜」
あれ。
今の喋り方、明らかに妙ちゃんのものではなかった。それに声も違ったような。というか、今の癖のある喋り方をする人物なんて私は一人しか知らない。
やばい、これは非常に由々しき事態だ。言い逃れ……なんて出来るわけがない。なんせ重要な部分は全て口に出してしまったわけで、言ってない言葉といえば「決まってるでしょう」の「しょう」だけだ。正直、内容を読み取るのにあまり関係がない部分だ。
私は声のした方に振り返ることが出来ず、妙ちゃんに助けを求めてみた。が。
妙ちゃんはいつものようにニコニコ笑って、親指をグッと立てていた。明らかに楽しんでいる。
「本人って、俺かィ」
ぎこちない動きで振り返ってみると、爽やかな笑みを浮かべた沖田くんがいた。
「自分の話をされてちゃ気になっちまうや。何の話をしてたんでィ?」
「えーと……沖田くんは」
「沖田くんはカッコイイって言ってたのよ、この子が」
「妙ちゃんんん!!!」
何でそこで口を出すんですか!
しかもそんな話はしてないでしょう!と、目で訴えてみるが、妙ちゃんは「それじゃ」と立ち去っていった。
残された私は呆然と妙ちゃんの後ろ姿を眺めていた。
すると…。
「カッコイイ、ですかィ」
「お、沖田くん、今のは……」
「嬉しいや。…でも、今度はアンタの口から言って下せェ。そしたら俺も」
沖田くんの優しげな眼が私を捉えた。
いつもの意地悪な眼ではない。
「アンタに可愛いって言ってやりまさァ」
「え」
「んじゃ」
私の頭をポンポンと撫で、沖田くんは近藤くんや土方くんのいる方へと歩いていった。
私はというと、沖田くんの姿を眺めた後、顔を真っ赤にさせて机に突っ伏した。
(やばい、今の…やばいっ)
これは、脈ありと考えてもいいのだろうか。
「どうした総悟、顔赤ェぞ」
「何でもありやせん」
「……どうせアイツだろ」
「うっせー土方、死ねばいいのに」
「何だとテメェ図星かよ」
(ヤベェ、カッコイイとか……ヤベェ)
私達が互いの気持ちに気付くのは、もっと先の話であった。
END
2009 08 25