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□出会えた、奇跡(完)
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「恭弥、愛してる」

これが最近の俺の口癖。



俺のじゃじゃ馬はとにかく感情が顔に出ない。
クールビューティーというやつかな。
だから本当に俺のことが好きかわからない。
不安にもなるし、時々嫌にもなる。

だけどそんな恭弥も好きなんだ、俺は。

俺の言葉が恭弥に伝わってるかなんてわからない。
最近は嫌われてるんじゃないかって考えちまう。

だから俺は愛を伝える。

恭弥を俺に縛るために。



「ねえ、ディーノ」

「ん、なんだ」

「僕のこと嫌いになったの?」


何を突然言い出すのかと思えばそんなこと。
あるわけない、こんなに好きなんだぜ?
今までの、伝わってなかったとでも?


「…ったく、いきなりなんだよ」

「最近キスするとき、冷たいんだ」

「…え?何が?」

「貴方の心が冷えてるの、気付かない?」


そんなこと気付かないよ、恭弥。
第一、なんで俺の心は冷えてるっていうんだ?


「ディーノと僕、この広い宇宙で出会えたんだよ」

「あぁ、そうだな」

「それって凄いと思わない?」


あぁ…お前は俺の考えてることがわかってたの。
お前はお前なりに伝えようとしてるのか。
俺が不安になってきてるのを知ってたのか…。


「…凄いことだよな」

「ディーノとこうして一緒に居られるだけで幸せ。その幸せは何億とある星の中から僕が自分の手で掴みとったもの。
わかる?
僕は今、幸せなんだよ」

「俺はお前がいれば、いや、俺の隣にいるだけで幸せだよ。嘘じゃない、本当の気持ちなんだよ、恭弥」

「……僕は…」

「…ん?」

「こうして二人が出会えた偶然が奇跡だと思う。
…それは…貴方だけに伝えときたかった」


ぎゅっ、と抱きしめる。
きっと恭弥は俺に愛されていないんじゃないかって闇をさ迷っていた。
なら俺が導いてやる。
二人が不安なら、二人で乗り越えていけばいい。

さっきよりもきつく、強く、抱きしめる。
恭弥の手が俺の背中に回される。
その手は、震えていた。


髪の毛を撫でてやると、顔を埋めた。


おでこにキスをしてやると、睨んできた。


愛してると耳元で囁いてやると、赤くなった。


一生離す気ないからと呟くと、そっちこそ覚悟しなよと言った。


そんな恭弥が可愛くて、愛しくて、キスを何度も唇に落とした。

今度は冷たいなんて言わせない。
俺は恭弥を愛してる。
例え記憶を失っても、また恭弥だけを好きになる自信がある。
俺には恭弥だけで、恭弥には俺だけでいいんだ。



いつしか安心したのだろう恭弥は俺の腕のなかでスゥスゥと寝息をたて始めた。

こんなに綺麗な奴、なのに伝えたいことが上手く言えない俺の可愛いじゃじゃ馬。

手放す気は、元から無かった。

これから作っていけばいい、ふたりだけの道を。

もしそれが隘路だとしても、俺がいる。

雨降るときには俺が傘になる。
風吹くときには俺が壁になる。

不安なときには俺が愛を囁く。

それしかできないけど、それならできる。


「……恭弥…」

ちゅ、とキスをすると目を覚まして微笑んだ。

…好き、そう言って恭弥はまた夢の世界に旅立った。



この世でたった一人の最愛の恋人。

気まぐれな俺だけの黒猫。



出会えた、奇跡。
 

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