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□淡い色の雪
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「恭弥ッ!デートしようぜ!」
応接室で仕事をしていると突然ドアが勢いよく開き、あぁ今日も来たなと思っていると、いきなり何を言い出すかと思えばそんなこと。
窓の外ははらはらと雪が降っていた。
「風紀の仕事溜まってるの。だからむ…」
「今日くらい休めって!な、いいじゃん行こう?」
まだ言い終わらない内に言われてしまったことに、呆れて物も言えない。
飼い主に散歩に連れていってもらう前の子犬のようにキラキラと瞳を輝かせてるディーノを見ていると、なんだかどうでもよくなって大きく溜め息をついてみせると、その太陽のような顔をもっと輝かせた。
「じゃ行こうぜ!なあ、どこ行く?恭弥の行きたい所行こうぜ!」
「行きたいとこ?」
「俺はどこでもいいんだ、恭弥が行きたいとこなら」
イタリア人はなぜこうも恥ずかしい台詞をさらっと言えるのか。
日本人でよかったとつくづく安心する。
「…とくにない」
「え、ねぇの!?困ったなぁ〜…どうしようロマ」
「情けねぇボスだぜ全く。ないんなら散歩でもしてくりゃあいいじゃねぇか」
「そっか!恭弥、散歩しよ散歩!外はさみぃからマフラーを……恭弥、マフラーは?」
「忘れた」
「…ったくしょうがねぇ奴だなぁ。俺の貸してやるよ」
ほれ、と渡された白いマフラー。今さっきまでディーノが巻いていたから温かい。ディーノはというと紺色のような深い藍色のマフラーをロマーリオから受け取って巻いていた。
これも彼の優しさ。
温かいマフラーを僕に貸してくれた優しさ。
白いマフラーは温かくて、それでいてとてもディーノの香りを感じることができた。
すぐ近くにいるような気がした。
「さ、恭弥、行くか」
ん、と差し出された手を暫く見つめ、差し出された手の上に手を重ねるとそのままディーノのダウンジャケットのポケットの中にいれられた。
「ロマは来なくていいからな!」
「恭弥に迷惑かけんなよボス」
くつくつと笑うロマ。
ロマに見送られて僕らは並中を後にした。
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