駄文倉庫【D-1】

□君、嫁ぐ日 …雅季
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「嫁に行くことになりまして」



あっけらかんと君は言う

それはまさに晴天の霹靂






「…………そうなんだ」



だけど僕は

敢えていつも通りの口調で答える









僕たちはお互いドライで

お互いのプライバシーには
踏み込まない間柄



恋愛の話なんて

かけらもしたことなかった






君が僕の知らない誰かと

オツキアイしてるのは知っていた



いつかこんな日が来るだろうことも

薄々判ってた









だけど





そんな日なんてまだまだ来ないと

遠い未来の話だと



どこかで思ってたのかも知れない









じゃなきゃ



内心こんなに

動揺している理由が判らない














「……おめでとう」






僕の言葉に



はにかんだように微笑う君






それは僕の知らない顔で



君が

一気に

遠くに行った気がした















判ってる



君には君の

僕には僕の



それぞれの人生があるってこと









僕たちはずっと兄妹で

僕は兄として君の幸せを一番に願う









だけど






もう少し

あと少しだけ



僕だけの妹で居てほしかった






……なんて

君を縛る権利僕にはないんだけど















今はただ願う



最愛の妹の君が

世界で一番幸せになれるように









そして思う



ここから去っていくまでの

あと幾ばくかの君との時を



珠玉のように大事にしようと









とりあえず

明日



両手いっぱいの花束を

君に贈ろうか?






可愛い君に相応しい

可愛いピンクの花束を




 

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