駄文倉庫【D-1】

□世界に一つだけの僕の花 …雅季
1ページ/1ページ

 




 野に咲いていた、

 一輪の花に、

 僕は、心奪われた。






 温室育ちの豪華な花でなく、清楚で野趣溢れる花。
 そしてその花は未だ蕾だけど、今まで見たどんな花よりも可愛らしく、すっかり僕の心をとらえてしまったんだ。



 そして僕は咲かせてみたくなった。僕の手で。その花を。

 可愛らしい蕾がほころびたとき、どんな美しい姿になるのか、一番近くで見たいと思ったんだ。






 だけど。






 花には害虫がつきもので。
 この花にももれなく寄ってくる。

 しかもこの花に惹かれる虫はやたら多くて、僕は悪い虫がつかないよう、しっかり目を光らせておかなければいけなかった。



 だからといって温室に閉じ込めておくわけにはいかない。
 花は陽の元風の元にあるべきだと思うし、野の花が一番輝ける場所を、僕が奪う訳にはいかない。



 そうするとまた悪い虫が寄ってくる訳で……






 ああ、手がかかる。






 だけどそんな労苦も厭わないほど、僕は君が好きなんだ。

 世界に一つだけの、僕の花。



 可愛い可愛い君が、綺麗に花開く時を、僕は一番近くで見守っているから――

 だから君は、僕の為に美しく咲いてね。



 僕の、為だけに――




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ