駄文倉庫【D-1】
□世界に一つだけの僕の花 …雅季
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野に咲いていた、
一輪の花に、
僕は、心奪われた。
温室育ちの豪華な花でなく、清楚で野趣溢れる花。
そしてその花は未だ蕾だけど、今まで見たどんな花よりも可愛らしく、すっかり僕の心をとらえてしまったんだ。
そして僕は咲かせてみたくなった。僕の手で。その花を。
可愛らしい蕾がほころびたとき、どんな美しい姿になるのか、一番近くで見たいと思ったんだ。
だけど。
花には害虫がつきもので。
この花にももれなく寄ってくる。
しかもこの花に惹かれる虫はやたら多くて、僕は悪い虫がつかないよう、しっかり目を光らせておかなければいけなかった。
だからといって温室に閉じ込めておくわけにはいかない。
花は陽の元風の元にあるべきだと思うし、野の花が一番輝ける場所を、僕が奪う訳にはいかない。
そうするとまた悪い虫が寄ってくる訳で……
ああ、手がかかる。
だけどそんな労苦も厭わないほど、僕は君が好きなんだ。
世界に一つだけの、僕の花。
可愛い可愛い君が、綺麗に花開く時を、僕は一番近くで見守っているから――
だから君は、僕の為に美しく咲いてね。
僕の、為だけに――