駄文倉庫【D-1】

□私が飽きるまで …柊
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「あーもう飽きちゃった」



 時々彼女は言う。

 飽きる対象は時と場合により、趣味であったり、嗜好品であったり、……男であったりする。






 深く広く。それが彼女――俺が仕える西園寺家の令嬢の性質だ。

 のめり込めばとことんまで追い求める。そのジャンルは多岐にわたり、例えば音楽なら、クラシックから流行りのアニソンまで網羅する。
 追って追って……そしてある時、突如として飽きるのだ。



 飽きた時が終わる時。そうして彼女は次々と興味の対象を変える。






 多分彼女は、ある意味好奇心の塊なんだろう。それも知的好奇心の。
 知りたい欲求を満たしてしまえば、対象に対する興味は失せてしまう。

 彼女を飽きさせないためには、並々ならぬ努力が必要だ。






 だが――






 俺が西園寺家にやって来てからこっち、彼女が今までずっと飽きていないモノは、唯一俺の淹れるコーヒーだけだった。




 
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