駄文倉庫【D-1】
□花は短し、恋せよ男子 …裕次
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-驚天の章-
俺は恋をしている。
妹への、秘めなきゃいけない恋。
今日は西園寺の取引先でパーティーがある。
父さんは海外に出張中なので、今日は俺が父さんの名代。
そして妹も、初めて外でのパーティーに出席することになっていた。
・・・・・・・・・・
コン、コン。
「……支度できた?」
俺はノックをして妹の部屋に入る。
窓辺に立つ彼女を見て、息をのんだ。
ネイビーブルーの上品なロングドレスに、シルバーグレーのショールを羽織り、長い髪をアップにしている。
いつもの清楚な雰囲気とはまた違い、やけに大人びて見えて……色気が垣間見える気がして、すごくドキドキする。
だけど……
そう思うのは、他の男も同じ…………。
そう思うと、このまま彼女を閉じ込めておきたい衝動に駆られる。
――――いや。
俺の体は、意志とは無関係に後手に扉を閉めていた。
「……裕次お兄ちゃん?」
彼女が不審そうな顔をした。
俺、何やってるんだろう……。
パーティーに行かなきゃいけないのに。
「…………ダメだ。君を連れて行きたくない!」
だけど俺の口も、意志とは無関係に言葉を紡ぐ。
「…………好きなんだ……。
そんな姿……他の男に見せたくない……!」
言って、自分の台詞にハッとする。
この想いは口にしちゃいけないのに……!
口を押さえた俺に、彼女はやんわりと笑って言った。
「……行こ。遅くなっちゃう」
・・・・・・・・・
俺の告白に何も返すことのなかった彼女。
――YESなのか、NOなのか。
ぐるぐるした思考の迷路に陥りながら、俺はパーティー会場で、半ば反射的に、挨拶してくる人々に応対していた。
主催者の令嬢とダンスを踊る。
ダンスの間中、偽りの笑顔を振りまき、社交辞令な会話を交わしながらも。
俺の心は此処にあらず、一人で待っている筈の彼女のことばかり考えていた。
ああ……。
こんな綺麗な女性と踊っていても、心は少しもざわめかない。
やっぱり俺、彼女じゃないとダメなんだ……。
一曲終わると、すぐに次を辞退して彼女のところに戻る。
俺がいない間にちょっかいを出そうとしていた輩を追い払うと、彼女の手を引いてゲストルームへ連れ込んだ。
「もう待てないよ……。
返事を聞かせて、お願い……。
…………友貴ちゃん……」
俯いた俺の力ない懇願に、彼女はクスッと笑い、そして俺に答えをくれた。
「……ありがと。
私も、裕次お兄ちゃんが大好きだよ?」
その言葉が信じられなくて。
顔を上げると、彼女が綺麗な笑顔を浮かべていた。
「……じゃあ……!」
「でもゴメンね? ダメなんだ」
――否定の言葉。
「どうして…………」