駄文倉庫【C】

□企画『お題道場』第2回
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「いや驚いた……まさか瞬君だったなんて……」



 絶対凛々ちゃんだと思ったのに。俺はとてもがっかりした。

 ……いや瞬君がスキンシップをはかってくれるのは、この上なく嬉しいんだけれども!
 いくら可愛くても華奢でも線が細くても、瞬君は男の子、凛々ちゃんとは違う。



 やっぱりイチャラブするんなら、女の子相手にやる方がいい。










 ………………。そうだ!






 俺は凛々ちゃんを探して駆け出した。



 凛々ちゃんの部屋を覗き、リビングをチェックし、キッチンや書斎、果ては俺の部屋まで探したが、こんな時に限って彼女は見つからない。

 いつもならすぐに見つかるのに……



 俺の凛々ちゃんセンサーが鈍るなんて、そんなことありっこないのに……!






 あちこちぐるぐる徘徊した挙げ句(その間、要君とは五回もすれ違ったけど)、ようやく廊下の向こうに凛々ちゃんの姿を見つけた。










「だーれだ?」



 そして彼女の背後に忍び寄り、言いながら両手で目をふさぐ。











「えー……誰だろ?」



 可愛くそう言ってくれるかな?






「わかるよ! だって裕次お兄ちゃんだもん!」



 それともきっぱり言い切ってくれるかな?






 俺はドキドキしながら、彼女の次の言動を待った。



 彼女の両手がゆるゆると上がり、俺の両手に添えられる。柔らかくて温かい手。その手が何かを確認するように俺の手を撫で――















「……ほわりゃああああああッ!!」






 そのまま両手首を鷲掴みにされ、雄々しすぎる雄叫びが上がったと同時に――



 そのまま俺の身体は宙を舞った。










   ズドン!






 一瞬にして反転した景色。
 そして背中に走る痛みに息が詰まる。










「り……凛々ちゃん……痛い……」


「あ、裕次お兄ちゃんだったの。てっきり不審者かと思っちゃった♪」






 悪気ゼロパーセントの笑顔で凛々ちゃんは言う。

 カワイいのに……こんなにカワイいのに、今俺を軽々投げ飛ばしたよね?






「こないだ御堂さんから護身術を習ってね。不審者が出たらこう対処しなさいって。
ちょうど誰かで試してみたかったのよねー」






 ……要君は、『大の男を投げ飛ばす』なんて護身術は教えないと思うよ……?






「これならどんな不審者が出ても大丈夫だよね、裕次お兄ちゃん♪」






 ああ……



 どこまでも悪意のない、君の笑顔がまぶしいよ……。




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