駄文倉庫【C】
□企画『お題道場』第3回
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title…いたずらな指先
stage…パラレル
character…???
開け放った窓から夜風が入ってきた。身震いするような寒さを感じる冷たい風だ。
だけど今の私は寒さを感じない。今からしようとしていることにある種の酩酊を覚えた脳は、この上なく私を上気させてくれていた。
私の前には、両手を戒められたひとりの男。
残酷なまでに嬉々とした微笑みを投げつけてやると、彼は掠れる声を絞り出して赦しを乞うた。
「……姫様……もう……お止め下さい……」
「貴方も存外、物わかりが悪いのね」
言いながら私は彼の首筋に指を滑らす。ピクンと反応する彼に、思わず笑みを深くする。
「いつまでも姫扱いしないで頂戴。今の女王はこの私よ。大人しく私に従いなさい」
言いながらも私の悪戯な指は、抵抗できない彼のシャツのボタンを、ひとつ、またひとつとはずしていく。
冷たい夜気に晒されて、彼は思わず身を固くする。……それとも私の冷たい指先の所為かしら。どっちでもいいわ。彼のこんな顔が見られるなら。
「ひ……姫様……っ」
「その呼び方は止めなさいと言ったはずよ」
ボタンをすべてはずし終え、はだけたシャツから彼の逞しい胸板が見える。
見せつけるようにゆっくりとそこに指を伸ばしながら、私は妖艶に微笑み……言った。
「さあ……。
……どこをくすぐって欲しいの?」
「だぁから……止めてください……止めろって!
お前のくすぐり、マジで凶 悪なんだから……ってうひゃひゃひゃひゃ!」
「え? ココがいいの?」
「……ちょっ……ソコ……だははははは!」
「ああ……堪らないわその反応。ゾクゾクしちゃう。やっぱりいたぶるのは雅弥が一番ね」
「やーめーろー! そんな一番嬉しくねー! そして指をわきわきさせるんじゃねー!」
「ふふふ……逃げられないわよ。おとなしく、私の玩具になりなさい!」
「イヤだ! 誰か助けてヘルプミー……!」
・・・・・・・・・
別室でチェスに興じていた雅季と巧は、風に乗って聞こえてきた悲鳴にも似た笑い声に、駒を動かす手を止めた。
「……って言ってるけど。
助けてあげないの、雅季?」
「嫌だ。僕はやられるよりやる方がいい。哀れに思うなら巧が行けば?」
「俺も嫌かな。
今行ったら、自分があの『ド』が付くほどSな女王様のターゲットにされちゃうもん。
……雅弥にはスケープゴートになってもらおう、俺たちのためにね」
「不敬だよ、巧。否定はしないけど。
と言うわけで雅弥、頑張れ。君の尊い犠牲は無駄にしないよ。……多分」
開いた窓から聞こえる悲鳴に心の中で謝って、それから聞こえないフリをして。
雅季と巧は、中断していたチェスの続きに興じるのであった……。
Is it a happy conclusion?
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