駄文倉庫【C】

□企画『お題道場』第6回
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title…白いフリルの誘惑  

item…白いふりふりエプロン

character…東條院 蓮   





「さあ凜々。これを着けるがいい」



 彼は部屋に入るなり、綺麗にラッピングされリボンまでかけられた箱を一つ、私に寄越した。
 私は多少不審に思いながらも(そも彼のやることを訝しむなと言う方が無理がある)、包装を解いて箱を開け、中に入っていたモノを目にして……










「こんなモノ着れるかあああ!」



   どごしっ!

 渾身の左アッパーは、ものの見事に彼の右頬を捉えたのだった……。










「何をするんだ凜々。せっかくお前に似合うと思って買ってきたのに……」



 彼は東條院蓮。
 力いっぱい殴り飛ばしてお星様にしてやったのに、何故だかいつも即座に戻ってくる謎な人。

 そして悲しいことに私の彼氏でもある。本当に悲しいことに。
 そもそもなんでこんなヒトを好きになったんだろう。それすら謎。



 だって彼はやることなすこと意味不明。現に今回だって――










「どういう基準で選んできたのよソレ!」






 私はビシッと箱の中身を指差した。
 こともあろうに……エプロン……しかも真っ白でふりふりフリルのエプロンを、私にだなんて……!

 一体何を考えてるのよ!?






「どういうとはなんだ? 俺はただ、普通にそれを着けたお前に『お帰りなさい』と言って欲しかったのだが……」






 ヤらしい。ヤらしすぎる。
 そんなことをしれっと真顔で言わないでよ!






「どうしても、駄目か……?」


「う……っ」



 彼が上目遣いに見つめてくる。私がその目に弱いのを知ってか知らずか。これだから天然ってタチが悪い。

 だけど私にだって譲れないモノがある。今回は絶対譲っちゃいけない。

 私は暫し考えて――










「……っまずあなたが着てみせてよ! そうしたら考えてあげなくもないわ!






 絶対できないでしょ?
 コレなら諦めてくれるよね?










「そうか……」



 蓮は顎に手をやって考え込む素振りを見せる。
 ……え? 考えるところなの?






「凜々がそんなに俺のエプロン姿を見たいと言うのなら、その望み、叶えてやろう。
大丈夫だ。俺ほど美しい男なら、どんな衣装だって華麗に着こなせるからな!」










 事もなげに言いながら、箱に手を伸ばす蓮。



 冗談……でしょ?



 本気なの?
 止めて私やりたくないし見たくない……










「何考えてるのよっ!
は……は……裸にエプロンなんて……破廉恥にも程があるわっ!」










 羞恥と怒りがない交ぜになり、真っ赤になって怒鳴った私。だけど彼はきょとんとした顔をしている。






「…………? 何を言っているんだ凜々?」


「…………………………え? え!?」






 私はとんでもない勘違いをしていたことに気がついた。



 だって……いかにもソレっぽいエプロンを選んできたもんだから……私てっきり……てっ……きり…………!?!?!










 ……ああ……穴があったら入りたい……と言うか…………










「……そもそも蓮がこんなモノ買ってくるからいけないのよーーー!」






 私の八つ当たりコークスクリューパンチが、今度は彼の顎を捉え――






   キラーン






 そうして彼は再び星になったのだった……。




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