駄文倉庫【D-1】
□私が飽きるまで …柊
1ページ/2ページ
![](http://id19.fm-p.jp/data/189/scent1212/pri/17.gif)
「あーもう飽きちゃった」
時々彼女は言う。
飽きる対象は時と場合により、趣味であったり、嗜好品であったり、……男であったりする。
深く広く。それが彼女――俺が仕える西園寺家の令嬢の性質だ。
のめり込めばとことんまで追い求める。そのジャンルは多岐にわたり、例えば音楽なら、クラシックから流行りのアニソンまで網羅する。
追って追って……そしてある時、突如として飽きるのだ。
飽きた時が終わる時。そうして彼女は次々と興味の対象を変える。
多分彼女は、ある意味好奇心の塊なんだろう。それも知的好奇心の。
知りたい欲求を満たしてしまえば、対象に対する興味は失せてしまう。
彼女を飽きさせないためには、並々ならぬ努力が必要だ。
だが――
俺が西園寺家にやって来てからこっち、彼女が今までずっと飽きていないモノは、唯一俺の淹れるコーヒーだけだった。
![](http://id19.fm-p.jp/data/189/scent1212/pri/17.gif)