とれじゃーぼっくす
□ ・アニエスカ様より・
『困らせたい』一条慎之介
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「…なっ…」
返事をする前に塞がれる唇。
柔らかくて暖かくて安心する大好きな唇。
疲れた日には堪らない。
止められない。
「……ン…」
「………あかんわ。ちゃんと祝ってからって決めとったのに、止まらんわ」
そう言うなり慎之介さんは私をその場にそっと押し倒した。
参ったわ〜って自嘲しつつ頭をかきながら…
でも外された眼鏡からは、
もう止める気なんてない、
彼の本気の瞳が現れる。
テーブルにカタッと置かれた眼鏡を見ると、
私今から抱かれるんだ…、
と毎回認識せずにはいられない。
でも今夜は私の特別な日…。
ちょっと足掻いてみようかな?
「…ん…慎之介さん…ケーキ食べないの?」
くちづけながら私を裸にしていく彼に意地悪を囁いてみる。
「先に紫ちゃん食べたい…」
「でも私、ケーキ食べたい。今日は誰の誕生日?」
うっ…と手を止める慎之介さん。
可愛い。
私も慎之介さんの困った顔が好き。
苦笑いした時に隠す瞳の奥のハンター。それが見え隠れする度にゾクゾクする。
もっと刺激して呼び覚ましたくなる。
「そない意地悪言わんといてや。どんなけ紫ちゃんの帰り待っとったと思うん?」
私をあやすようにおでこや頬、耳たぶや首筋に優しいキスを落としていく。
でも肌に這う手は貪欲に私を求めて止まない。
そのギャップに私もだんだんほだされてしまう。
「でも蝋燭は消さなきゃ…危ないよ」
「大丈夫やって。後でええよ。ムードあっていいやん…」
押し退けようとした手も捕まえられて、何も言わさないように唇が塞がれた。
もう、きっと何を言っても慎之介さんは手を止めないだろう。
なら、
なおさら煽りたい。
もっと本気にさせたい。
「…ン…でも…」
「『でも』はもう無し!もうこれ以上焦らさんとって。
…俺、酷い男にならなあかんやん」
蝋燭の炎で揺らめく影が天井に映し出されるのを眺めながら、
その言葉に全身が痺れていくのがわかった。
困らせれば困らせるほど、
いつもおちゃらけてる貴方の、
切に私を求める顔が見れる…。
どんなに跳ね退けてもそれを上回る勢いで求められたい。
それが何よりのプレゼントなんだよ。
ああ、でももう私も限界。
撮影で疲れたし、こういう時ってどんなに甘いケーキを食べるよりも癒されるし、
どんなに心地好いベッドの中よりも、貴方の腕の中が安らげる…。
全身がほぐされるように心地好いんだ。
私は抵抗するのをやめて、慎之介さんに身体を預けた。
「…ハァ………紫……」
虚ろな瞳で私の名を呼ぶこの表情も好き。
時々眉間にシワを寄せて息を整えたり、額に浮かんだ汗とか、意外と切れ長なクールな瞳とか、
すごくセクシーで…真剣さが伝わって大好き。
「そんな見んといてや。恥ずかしいやん。…えらい余裕やな…」
息を切らしながら恥ずかしがる慎之介さんも可愛くて仕方ない。
「…涼しい顔して…ホンマ、クールビューティやわ、紫ちゃん。」
真剣な表情で私を見つめる瞳。
さっきの稽古中の表情を思い出す。
あの瞳で見つめられてるんだ…。
想像しただけで鳥肌が立った。
それから慎之介さんは熱い唇でそっと耳たぶにキスすると耳元で囁いた。
「………ええ事教えたるわ。そういう態度ってな、ものっすご、男は崩したくなんねんで…」
痺れるような甘い警告。
言い終えると同時に私の足を高く持ち上げ、最奥まで一気に突き上げた。
ビリッと突き抜けるような快感に思わず身体を退けぞらす。
有無を言わせない圧倒的な力と勢いに何かが崩されてく。それがさらなる快感へと繋がった。
堪らなくなって高い声が漏れてしまう。
「…アアッ!」
「…ッ!……ハァ……それが見たかってん…堪らんわ…。
頼むから俺以外には見せんといてや…」
「…ん」
また甘いキスが降ってきた。
上昇していく温度と重なる刺激に呼吸が乱れてく。
身体が自分のものじゃないみたいに熱く、勝手に涙が出てくる。
でもこんな感覚嫌いじゃない。
もっと乱れたいとか、
もっと熱くなりたいとか、
そう思うのは慎之介さんとだけ。
「…あぁ…っ…」
「…ホンマ、紫ちゃん可愛いわぁ…」
「…か、可愛いとか…言わないで……アッ!」
「何?また俺を煽ってるん?…ホンマ、紫ちゃんはしゃーない子やなぁ…」
「…だから…!」
「…もう黙っとき…いくら違う言われても俺が可愛い思うんやから可愛いねん。」
「…っ」
歯の浮くような台詞に恥ずかしさでいっぱいになった私を、慎之介さんはちょっと楽しんでるみたいだった。
後で絶対に仕返ししてやる…!
と強く心の中で思いつつも…
でも慎之介さんの腕の中だけなら見せてあげても良いかな…
無意識に出てる『可愛い』私を…。
そこを愛してもらえるって幸せだと思うし。
だってクールは装えるけどそこは装えないから。
「…紫ちゃん…誕生日おめでとう…。来年も再来年もずっとずっと一緒に祝わせてな…」
そう耳元で囁いた慎之介さんの熱くて速い息使いと、全身を預けられた心地好い重みを感じながら私は目を閉じた。
「紫ちゃん…もう寝た?」
「もう寝る。今日は疲れた」
「え〜もうちょっとイチャイチャせぇへんの〜?まだプレゼント開けてへんし。」
「イチャイチャしない。プレゼントは明日のお楽しみにして今日はもう寝る」
「つれないの〜。エッチの後ってもうちょっとイチャイチャするもんちゃうの?」
「慎之介さん」
「な〜に?」
「ケーキ片付けといて。明日食べるから。おやすみ」
「なんやそんなことか〜。あかんわ。ホンマ寂しい…」
「慎之介さん、大好き」
「…ズ…ズルイワ…。そんなん言われたら寝かしてあげやなあかんやん」
「明日一緒に食べようね」
「そ、そやな!明日一緒に食べようなぁ。ホンマ楽しみやわぁ。紫ちゃんコーヒーに合うから好き言うてたやろ?だから俺な…」
「…ん…」
慎之介さんの声が徐々に遠くなっていく。
「んじゃ、とりあえずケーキ、冷蔵庫に片付けてくるわ♪…………ってもう寝てるし!早っ!
……なんか俺めっちゃ虚しいやん…一人真夜中にノリツッコミしてもうたわ…。
よっぽど疲れとったんやな…そやのにごめんな…ゆっくりおやすみ。
その分明日はたっぷりラブラブイチャイチャしよな〜、紫ちゃん」
慎之介さんの独り言に頬を綻ばせながら『ラブラブイチャイチャは無理』と心の中で呟いて、私は心地好い眠りに落ちた。
ね、慎之介さん。
なんだかんだ言って私の好きにさせてくれる、そんな優しい慎之介さんが大好きだよ…
絶対に本人には言ってあげないけど。
私を先に食べた罰、
甘んじて受けてね。
でもたまに見せるそんな強引さも大好きだけど、
それも内緒…ね。
おやすみなさい。
HAPPY BIRTHDAY DEAR YUKARI!!
BY METAMORPHOSE
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