Long

□★この恋=危険域
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どうして
こんなにドキドキするんやろ

アンタに触れられたんを思いだすと
俺の身体が俺じゃないみたいになんねん


…怖い

自分じゃなくなっていくみたいで…


…怖い


…怖い…
けど…

その先を知りたい…


なぁ、教えて謙也さん…

ずっとずっと
アンタの事が頭から離れん理由を…

もっと
触れて欲しいと思ってしまう理由を…

アンタが
俺を求める理由を…


知ったら俺はどうなるやろか…?


きっと…
後戻りは出来なくなる



…そうなんやろ?















さっきまで青かった空が急に灰色に変わり、雲がいつもより早いスピードで真上を通過する。

…どのぐらい時間が経ったやろか

部活の終わった夕方、俺はいつもと違う帰り道である人物を待っとった。
部室で声をかけようにもその人の周りはいつも誰かがおるから、こうして帰り道で待ち伏せするしかない。

音楽を聞きながら、壁に寄りかかる。
大好きな曲のハズやのに、ちっとも頭に入ってこないのは何でやろ…
聞こえるんは俺の心臓の音だけや…
ホンマに…うるさい


「ほな、またなー」


びくっと反応したその声に思わず顔を上げる。
ここからはちょお遠いけど、一緒に帰っとった友達と別れ、この道を真っ直ぐ歩いて来る人物が目に入った。

一歩、また一歩、近づいてくるたびにドクンドクンと心臓が鳴る。

…何でこんなん…
普通にしとればええだけや…


「謙也さん」

「うおおっ!!」


俺の顔を見るなりめっちゃ驚いた顔して横に飛び退く。

や、急に声かけたんもあれやけど…
そんな驚くことちゃうやろ


「光!?あれ?さっき急いで帰ったやん、何でここにおるん?」

「何でって…謙也さんの事待ってたんや…」

「…俺?」


謙也さんは自分を指差して首を傾げる。
俺が一回頷くと、僅かにやけど笑みを漏らしていた。


「そ、そおか…」

「…?…何がおもろいねん」

「ちゃうくて、今ちょうど光に会いたいって思うてたから…なんや嬉しくて…」

「は?さっき部活で会ってたやん、何言うとんのですか」


俺は呆れたように下を向く。


呆れた…?

ちゃうねん
…ホンマは謙也さんの顔を見てられんくなったから…

『会いたいって思ってた』


こんなセリフ

反則や…



「で、何か用やったんやろ?光こそ部活ん時言えば良かったやん」

「…部活でなんか言えんから待っとったんやけど」


ドクン…

ドクン…

何でやろ…
喉がカラカラや…


俺は謙也さんとの距離を縮めながら、震える唇で声を発する。




「お金、欲しいんですわ」




謙也さんの、驚きで見開かれた目が、俺の心の中を探るように揺れた。

いつの間にか握り締めとった手に、ポツっと冷たい雫が落ちる。

あぁ、もう雨が降ってきたんか…

空を見上げようとした瞬間、俺は強い力で腕を引っ張られていた。

謙也さんの右手が俺の左手を掴んで前を走る。

強くなっていく雨から逃げるように、俺達はただひたすら走った。


肌に当たる雨がじわじわと身体の体温を奪う。


でもな…

たった一か所だけ

めっちゃ熱いとこがあんねん…


俺はつながれたままの自分の左手をジッと見る。


熱い

熱い…

謙也さん、アンタの手…熱すぎや…




それとも

これは俺の手が熱いんやろか…?




結局分からないまま、俺は前を走る謙也さんを見つめた。


















「……っ…!!」


突然、唇を塞がれる。
静かなこの部屋には外から聞こえる雨の音しか響いていない。

髪も服も濡れたまま、謙也さんは俺をベッドに押し倒した。

普段の謙也さんからは想像出来ん噛みつくようなキス。
ポタリとまぶたに落ちる何かを感じ、そっと目を開けると、覆いかぶさっとる謙也さんの髪から雨の雫が落ちていた。


「…ひかる」


謙也さんはこの前屋上で見せた熱っぽい目で、俺を見つめとって…
その目を見ると、俺は身体の中から何かが湧き上がってくるのを抑えられへんかった。


また…これや…


セックスする時はいつも何も考えんでも終わったのに…


謙也さんだけはちゃうねん…

もっと名前を呼んで…

もっと俺を見て…

もっと触って欲しい…


そんな欲望が湧いてくるんや



「う…あッ!」


ピリ、と胸に痺れを感じ、思わず声を上げる。
濡れた制服のシャツの上から乳首を舐められ、慌てて謙也さんの髪を掴んだ。


「あ、ちょお…それ…嫌や…ッ!」

「気持ち良おない?」

「んッ…ちゃうくてッ…!」



…もどかしいねん

ベタベタ張り付くシャツも気持ち悪いし…
その…あれや…
布越しなんかやなくて
直接触って欲しい…


自分でシャツのボタンを外そうと手を伸ばすと、それは謙也さんの手で遮られる。
少し震えた手が、ボタンを一つ一つ外していき、俺はようやく濡れたシャツを脱いだ。


「…光…めっちゃ綺麗や…」


謙也さんがポツリと呟く。
俺の身体を隅々まで確かめるかのように手を這わせ、それだけで出そうになる声を必死に抑えた。
ふと、喉の下ら辺で謙也さんの視線が止まる。


「…ッ…なに…?」

「前にあったキスマーク、…消えたんやな」


あぁ、部室で見られたあれか…
そんなんとっくに消えとるわ…

謙也さんは何故かめっちゃ安心したような顔をして、もう跡のないそこを見つめた。


「なぁ…、やっぱりつけたらアカン?」

「…え?」

「キスマーク」



アカン。


って…他の奴には答えてきたんやけど…

もうそんなんどうでもええ…
謙也さんがつけたいならつければええんや…

そう思ってまう…


「…別にええっすよ」


俺の言葉に意外そうな顔をした謙也さんは、チラ、と笑顔を見せ胸に唇を落とした。

ちゅうっと強く吸われ、少し顔をしかめる。
そんな痛ないけど、なんやちょっと恥ずかしい気がして…

俺からはよく見えんけど、跡がついたんを確認した謙也さんは満足そうにそこを指でなぞった。


なんて顔すんねん…

そんなんすぐに
消えてまうのに…


カチャとベルトを外す音が聞こえ、俺は咄嗟に身体を強ばらせた。


「ひかる…、その…触ってもええ?」


遠慮がちに聞こえたその声に、俺は黙って頷く。
ズボンと下着を脱がされる感触の後、ゆるゆると自身を撫でられ、声が出そうになるのをグッと堪えた。


「…ッ…う…」

「声、我慢せんで…」

「んッ…あぁ!…は…ッ」


だんだんと強くなる刺激に耐えられず、上擦った声を上げる。
急に恥ずかしくなって手の甲で必死に口を抑えるが、あまり意味はなかった。


「…う…ッあ…んんッ…!!」


どんどん湧きあがる快感に俺の我慢も限界が近くて。

このままやったらイってまうわ…

早くイきたいんは確かなんやけど…


俺は謙也さんのズボンを押し上げるそれに目をやりながら必死に言葉を紡ぐ。


「ッもう…、あッ…謙也さ…んの、挿れ…て…」

「…えっ…!」

「俺だけ…ッ気持ちええの…嫌や…!」


そう言うと、謙也さんはめっちゃ嬉しそうに笑って、触れるだけのキスをした。

俺の後ろに這わせた指が入口をなぞる。
謙也さんの指をすんなり受け入れたそこは自分でも分かるぐらいヒクヒクしとって。
ぐちゅぐちゅと聞こえる水音でさえも俺の欲を高めていった。


「…謙也…さん、早よ…ッ…」

「…ひかる…ッ」


中の指を引き抜かれ、息をつく間もなく謙也さんのが宛がわれる。


セックスは、この瞬間が一番嫌い
他人のを自分の中に挿れるんやで…?
絶対好きにはなれへん…

そう、思っとったのに…


今はちゃう…
早くその快感が欲しくて、身体の中がめっちゃ熱い…



「痛かったら…ごめんな…」

「…んッ…ああぁッ!」


ズッ、と謙也さんのが中に押し入ってくる。


嘘や…
こんなん…

ヤバいぐらい気持ちええ…

今までやったら最後までイけへん時の方が多いくらいやったのに…
アカン…
挿れられただけでイきそうや…


「っ…ひかる、動くで」

「えッ…うあ…!」


大きすぎる快感に戸惑っていると、上から焦ったような声が聞こえた。
ちゅーか動かれたら俺ヤバいんちゃうの?

そんな考えも虚しく、ゆっくりと動きだす謙也さんに声を上げる。


「ひぁッ!あ、ちょッ…まっ…!」

「アカン、止まれへん…ッ」


何度も何度も奥を突かれて、意識が飛びそうなぐらい感じてしまう。
口から出る声も、もう抑えられへん…


「あ…ッ、や、あぁッ!」

「ッ…ひかる…」


謙也さんの顔に、声に、全てに全神経を持っていかれる…


…セックスなんて、つらいだけやと思ってた…

俺は相手が気持ち良くなるための道具に過ぎん


そう

思ってたんや





「あッ…も…アカンッ…!」

「ひかッ…俺も…ッ」

「んッ…や…、…あぁあッ!!」


全身を震わせて精を吐き出すと、謙也さんは俺の中から自身を引き抜きシーツの上に放った。


肩で息をしてぐったりする俺の頬に謙也さんの大きな手が触れ、ギュッと抱きしめられる。

謙也さんの腕の中で、何故か出そうになる涙を堪えた。



俺が今までしてきた事は何やったんやろか…



俺は

顔すら知らんような奴とセックスしとったんや


金のために…




馬鹿げてる

そんな事に何の意味もあらへんのに…




今は

金なんか欲しくない


俺が本当に欲しいのは…

欲しいのは…

………



「…謙也さん…」

「ん…?」

「…俺……」

「うん…」

「…………」



どれだけ待っても、次の言葉は出て来んかった。

自分でも何を言おうとしたのか分からへん…



ただ

分かる事が一つだけある





謙也さん…



俺は
きっと…


…いや

もうすでに…





アンタに溺れとるんや…







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