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□★この恋=危険域
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7.5
光のいなくなった教室で、俺は開け放たれたドアを呆然と眺めていた。
光の後を追う事すら出来んかった…
あんな光…今まで見た事ない…
恐怖に見開かれた目は、目の前の俺を映してはいなかった…
…何を…見てたんや…
「謙也」
開いたままのドアから白石が顔を出し、光が走って行った方を見ながらドアを閉めた。
「白石…」
「今、お前らの様子見ようと思って来たんやけど…、なんやあの財前の怯えた顔、あんなん見た事ないわ…何があったん?」
「…俺にも分からん…急に震えて…」
あの怯え方は尋常やない…
直前まで光は俺に応えようとしてたんや…
なのに…何で…
「謙也、財前が身体売っとった事で変な噂を聞いたんや…」
「…噂…?」
白石は一瞬何かを迷うような表情を見せたが、俺の真剣な目を見て淡々とした口調でその噂を話した。
「…ッ…何やそれ!?」
聞いた直後、俺は白石の服を掴んで詰め寄った。
それはあまりにも理不尽で残酷な話やったから…
「落ちつけ、ただの噂や…ホンマかは分からん…、でも…調べる価値、あると思わへんか?」
白石の服を離し、俺は混乱する頭に手を当てた。
「それがホンマやったら…俺は…ッ…」
そんな事…
考えたくない…
でも…
そう考えたらすべての辻褄が合ってしまう
あの日、光が俺から離れた事…
さっき急に怯えた光の態度…
全部、つながってしまうんや…
「…白石…俺…」
「…最後まで付き合うたるで、謙也」
俺の中で一つの答えが出ようとしていた。
それを解くには俺が光の気持ちを信じるんが大前提…
光…
例え誰かに笑われようとも
俺はどこまでも信じるで…
光にとって俺は特別な存在やったと…
…今でもそれは変わらんと言う事も…
全部全部…
信じたる
もう、俺の迷いは消えた
必要なのは
ほんの少しの覚悟…