「さよならね」
彼女が言った。
「ああ…そうだね」
私も頷いた。
「貴方のこと、愛していたわ」
彼女が言った。
「私も愛していたよ」
私が言った。
「いつまでも、あの時のままでいられたらよかったのに」
彼女が言った。
「仕方ないさ、人は進むものだから」
私は言った。
「貴方が言うと、何だかおかしいわ」
彼女は笑った。
「そうかな」
私も笑った。
「貴方を一人、置いていかなくてはいけないのは悲しいわ」
彼女は言った。
「大丈夫だよ」
私が言った。
「けれど…このまま一緒にいても、貴方を余計苦しめるだけなのね」
彼女は泣いた。
「…」
私は何も言わなかった。
「さよなら…ね」
彼女が言った。
まだ瞳は湿っていた。
無理矢理つくった笑顔は今にも崩れ落ちそうだ。
「ああ…さよならだ」
私はどんな顔をしているのだろう。
「貴方のこと、愛していたわ」
彼女が笑った。
「私も愛しているよ」
私は笑えているだろうか。
彼女はもう一度私に別れを告げると、アダムと手を取り合って去っていった。
「さようなら、イヴ」
私の愛する、美しき人。