その他

□Do not bother me,and you'll have a nice day.
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ぬくぬく。
俺はこたつに入って、ぼんやりとTVを観ていた。
台所には雑炊。目の前にはその残骸。足先まで、完璧に、あったまってる。
一つだけひたむきなことは、ただひたすら、恋人の帰りを待ってること。
そのとき、インターホンが鳴った。
「お」 俺は立ち上がって、玄関へ向かった。下界の温度もものともしない。
てのは嘘。
扉ががちんと開く。
「お帰り」
栞は俺を見つけるなり、覆い被さるように、ぎゅうっと抱きついて来た。
「…つかれた。」
いつもより掠れた声が、拍車。外の温度を保ったほっぺたが、つべたい。慰み程度にキスをした。
リビングへ入るなり栞は、こたつに一目散に潜り込んだ。
「雑炊?」
「うん。今出すわ」
「ごめん。ちょっと食べれない。喉が…」
ごめんね、といささか申し訳なさそうな声で言う。
「そんなきつかったんだ今日」
「やりたい曲、やりたいだけやったら、かなり…
やっぱり体力って大事だよねえ…」
そう言いながら、ごろんとカーペットに頭を寝かす。
「矛盾。」
「いーの疲れたから今日は!TV消しちゃうよ?」
「やめてくれー」
TVの中では、かわいいアライグマが今まさに、檻に入れられた。
「だめだ、この辺の話ほんと泣きそう」
「最近これ観てよく泣いてるよね。前も、帰って来たらぼろぼろ泣いててびっくりした」
いかにも淋しい子ども。栞が呟いた。
「なんて露骨な…」
「だって」
「俺は栞がいれば幸せだぜッ」
「誰かがいるかいないかどかじゃなくてただ突発的に君は淋しい」
リンゴーン。
ちょっとだけ気まずく、玄関のベルが鳴る。
俺は肩をすくめて、こたつから這い出た。



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