…・・・ 春よ、来い
『うわぁ、今日はあったかいねぇ』
『もう三月だからな』
『あ、亮くんアレ見て!桜の木に蕾がついてる!』
『本当だ』
『まだ咲かないのかな…早く満開の桜見たいな』
『もう少し先だろ。まゆみはせっかちだからなぁ』
『なっ、ち、違うもん!』
『はいはい、ムキになる辺りが怪しい』
『違うってば!わたしはただ…』
『…ただ、何?』
『う、ただ、亮くんと一緒に居られる間に、たくさん綺麗なもの見てたくさん思い出作りたいと思っただけだもん…』
『うん』
『亮くん、もう少ししたら東京の大学行っちゃうから、それまでに少しでも多く、ね?』
『うん』
『亮くんさっきからソレばっかり。わたしは真剣に話してるのにっ』
『まゆみ、顔真っ赤』
『なっ!は、恥ずかしいから見ないでよ!』
『はは、うん、でもそんな顔も可愛い』
『ばっ!からかわないで!』
『からかってなんかない。俺もまゆみと同じ』
『へ?』
『一緒に居られる間に、うんと思い出作ろうな』
『う、うん!亮くん、』
『まゆみ』
──“大好き”
春は別れの季節、出会いの季節、恋の始まる季節、そして、愛の深まる季節。