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□あれが愛と云うんだって、
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俺は総合病院へ行って、通い慣れた1107号室へ向かう。
誰もいなくなった病室は、ついこの間まで彼女が笑って眠って生きていた場所なんだ。
そう思うと胸がつぶれそうになる。
どうしてくるみがいない?
俺は新しくなったシーツを触り、そのまま床に座り込んだ。
「あれ…遥くん?」
聞き覚えのある声に、のろのろと顔を上げると佐々木先生が俺を見下ろしていた。
「佐々木先生」
「くるみちゃんのお葬式、行かなくていいの?」
先生の口から葬式だなんて、俺は俯いて行かなくていいんですって呟いた。
「そっか」
佐々木先生は病室に入ってくると、俺の真正面にしゃがんで白衣のポケットをごそごそ引っ掻き回している。
「…何、してんですか」
俺の問い掛けにんーって生返事をした後、あった!ってやけに嬉しそうな声を出して何か白いものをひっぱりだした。
「はいコレ」
「なんすか、コレ」
「手紙、くるみちゃんから預かったんだ」
先生はニコニコ笑いながら、きちんと渡したよって言って病室から出ていった。
ついでにドアも閉めて行ってくれた。
くるみが俺に。
ぼんやりとその真っ白な封筒を見つめる。
裏返したらいかにもくるみらしい、丸みを帯びた可愛らしい字体で『ハルカちゃん』と書いてある。
「馬鹿木の実」
悪態をついて、俺はゆっくりと手紙の封を切った。
あれが愛と云うんだって、