mini

□もしもし
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別にたいした理由はない(僕の行動は理由がないことの方が多い)けど、しいて言うならそこに携帯電話があったからだと思う。

ただ、何の気なしに携帯電話を開いて、電話の発信ボタンを押した。

番号を押してなかったから(当たり前なんだけど)あの、ツーっていう音が耳の中に響くばかりだった、最初は。

ずーっとその音を聞いていたら、何だか頭が痺れてきて(体育や何かで五十メートルを全力で走り終わった後の感覚に似ている)ぼーっとしてきたんだ。

ふと何か聞こえた気がして、でもそれはあり得ないことで(当たり前さ、番号を押してないもの)、でもやっぱり微かに耳には別の音が届いていて。

聞き取ろうとして懸命に耳をすましていると、急に誰かが電話越しに話す声が聞こえた(勿論それは本来ならばあり得ない、だって)。

番号を押してないから、どこにも繋がっていないはずなのに。

聞こえた声は、たった一言こう言った。

『後でかけなおすから』

男だか女だかわからなかったけど(声だけで判断するのは中々難しい)声は確かに僕に向かってそう言った。

それ以来、何となくだけど電話が怖い。



(当たり前さ、いつあの声から電話がかかってくるかわからないんだもの)





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