mini

□キライじゃない
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side she




まぁちゃんのことは高校から知ってるけど、今も昔も少しも変わってなくてたまに可笑しかったり、変わったのは自分だけなのかって自覚して虚しくなったりする。

毎日遊んでたかと思ったら急に連絡つかなくなったり、かと思ったらある日突然電話してきたり。
気紛れな彼と一緒にいると友情とか恋愛とか人との繋がりって何なんだろうって根本的にわからなくなる。

けどまぁちゃんには、いつでもどこでも誰にでも同じ態度で接するっていう格好良いとこもあった。
みんなに同じように笑いかけて、どこで会っても声をかけてくれて、いつ電話したって毎回同じように話してくれる。

だから、カノジョになってって言われた時は正直かなりびっくりした。
彼が女の子や他の人に対して何か特別な感情を持つなんて思ってなかったし、そこがまぁちゃんのイカすところだったから。
って直接本人に言ったら、俺だってレンアイするし人の好き嫌いあるよって苦笑いしながら言われた。

別に嫌だった訳じゃない。
アタシだってまぁちゃんのこと好きだったから、正式に彼女になれたことはそれはもう両手離しで喜べた。

付き合いだしてからも今迄と何ら変わることはなくて、しいて言うならたまにキスするようになったくらい。

いつでもどこでも誰にでも同じ態度でいる彼だから、彼女になったからって何か特別なことが起きたりはしないだろうって思ってた。
今迄と何も変わらない、そんな毎日が過ぎていくって過信していたのかもしれない。
普遍で不変なものなんて有り得ないってわかってたのに。

まぁちゃんは一度も好きだよって明言してくれなかった。
アタシのこと好きって聞いても、いつもと変わらない顔で何でそんなこと聞くのって笑うだけで。

最初からわかり切っていたことだ。

まぁちゃんが誰にでも同じ態度を取ることは、彼の長所であり好きなところでもあった。
彼女扱いされなくたって構わないと思っていたのに。

アタシはただ、認めたくなかっただけなのかもしれない。

まぁちゃんは悔しいくらいいい男だ。
髪型を変えたら一番に気付いてくれるし、優しいし、言わなくてもわかってくれる。

だから、アタシが何を考えていたかなんて、彼はとっくに気が付いていたのかもしれない。
それでいて、気が付いてないフリをしていたのかもしれない。

本当のところはわからないけど。

とにかくアタシは、出来る限り軽い調子で、例えば明日の天気を尋ねるような調子で別れよって言ったのだ。

まぁちゃんは目を丸くして何でって聞いてきた。
好きかどうかわからなくなったって言ったけど、それは嘘だった。

少し甘い香水の匂いも。
明るい茶色の髪も。
笑うと出来るえくぼも。
高い身長も。
白くて細長い綺麗な指も。
アタシを呼ぶその声も。
ぜんぶぜんぶ大好きで。
好きで好きでたまらなかったのに。

あの時と同じ苦笑いを浮かべながらそっかって言うまぁちゃんを見て、アタシは心底泣きたいと思った。

ばいばいって言った声は情けないくらい震えてて、最後にアタシの頭を撫でていったその手のぬくもりが胸に刺さった。

彼の右手を掴んで、全部嘘だよって笑えたらどんなによかっただろう。




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