誰かが言った。
「クジラを食べるなんて可愛そうだ!あんなに賢くて愛らしい生き物は食べるべきではない!」
別の誰かが言った。
「全くその通りだ!ウシやブタも食べるべきではない!あんなに可愛らしい生き物なんだから!」
するとまた別の誰かが言った。
「しかし、それでは人間はいったい何を食べればいいんだ?」
最初の人が言った。
「簡単じゃないか。頭が悪くて可愛くない生き物を食べれば良いんだ」
さっき質問をした誰かが言った。
「それはいったい何?」
最初に話した二人が口をそろえて言った。
「そんなの馬鹿で愚かな人間に決まってるじゃあないか。そんなことも分からないなんて、君は馬鹿で愚かだなぁ!」
そして、その質問をした人は二人に食べられてしまった。
かくして、世界は賢く聡明な人間が馬鹿で愚かな人間を喰う啓蒙社会となり、賢く可愛らしいクジラやウシやブタは末永く幸せに生きたのだった。
これこそまさに、理想世界!