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□くだらないこと
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彼は、くだらないことだと言う。

朝起きてご飯を食べるのもおはようを言うのも生きていくために給料を稼ぐのも、みんなくだらないことなんだと言う。

「いつか死ぬのにさ、何でそんな頑張るわけ?」

風呂に入るのも瞬きするのも小さな声で好きな曲を口ずさむのも、みんなくだらないことなんだと言う。

「死ぬことに変わりはないじゃん。今死ぬか後で死ぬかの違いだよ」
「そうだね」
「そうだよ。だから会社になんか行かないでもっと僕の傍にいてよ」

彼は、全部くだらないことだと言う。

この世界で息をするモノの存在も彼が肘をついているテーブルも彼自身も、みんなくだらないことなんだと言う。

「いつか死んじゃうんなら、今一分一秒でも長く一緒にいたいよ」
「そうだね」

彼は、くだらないことだと言う。
わたし意外の存在は、彼に必要ないものなんだと言う。

「酸素も太陽もふかふかのクッションもいらない。君だけいればいい」
「そう」

わたしは違う。
朝起きてご飯は食べたいしおはようも言いたいし働くことは生きがいだと思う。

「今日はご飯に何を作るつもり?」
「オムライス」

風呂に入るのも好きだし瞬きしないと目が乾くし小さな声で好きな曲を口ずさめば元気が出る。

「いつ、帰ってくる?」
「まだわからない」

けど彼のいない世界では、それらはきっととても味気ないモノで、とても虚しいモノになるんだろう。

「早く帰って来て」
「うん」

どんなに不必要でくだらないモノでも彼と一緒なら必要で意味があるように思える。

だから、わたしは彼とご飯を食べたいし彼におはようを言いたいし彼と生きていくために働きたい。

「行ってきます」
「…いってらっしゃい」

愛しい人よ。
願わくばあなたにもいつかわかりますように。

あなたと一緒だから、わたしは不必要でくだらないモノだらけのこんな世界でも生きていけるんだと。





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